新型コロナウィルスの感染者が再び増加傾向になったために、政府が復興の目玉として考えていたGo Toトラベルキャンペーンが、イマイチ盛り上がりに欠けている。コロナが収まったら北海道に行きたい、沖縄に行きたい、テーマパークで遊びたい、そんな気持ちに水を差された気分だ。東京在住の人はキャンペーンがしばらく使えないし、東京以外の首都圏の人が遠くに旅行に行こうと計画しても、観光地からはあまり歓迎されていないことが伝わってくる。首都圏以外の人も、人混みになりそうなところへは、行くのをためらっている人も多い。
それに代わって、今年の夏の旅行や行楽のトレンドになりそうなのが近場へのレジャーである。
自分の住んでいる近くに魅力的なスポットがないか、改めて探している人も多いはずだ。実際に各自治体独自の企画として、地元に泊まるのを補助する「地元割」的な導入も行われている。ここで注目したいのは「住んでいる人の視点」ではなく、「旅行者視点」で地元や近場を見る機会ができることだ。いつもとは違う視点で自分の住んでいるエリアや都道府県の魅力を探す。知らなかった名所や、知っていたけどいつでも行けるから行った経験のなかった場所に、この時期だからと行くかもしれない。食べ慣れたはずの地元で育った野菜も、近場の海で獲れた魚も、いつもとは違う感覚で楽しむことができる。調味料だってそれぞれの地元の味がある。醤油を作っている生産者は47都道府県全てに存在し、それぞれの風土や食材に合ったものが作られている。意外に地元のものが全国からお取り寄せの対象になっているということもある。旅行気分で地元にある道の駅に足を運び、地元ならではの名産品を試してみるのもいいかもしれない。
この機会だから、地元をもっと知る、自分の住む都道府県を見つめ直すことで、地元への愛や住んでいることの誇りが深くなる人も増えるだろう。47都道府県全ての人がそれぞれの地元にお金を落とし、地元への愛を深めることができるのなら、Go Toキャンペーンが混乱したことに失望しなくてもいいかもしれない。



著者情報

第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。

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