「中食・内食」のバリエーションも豊かになり、若者のアルコール離れも加速する中、外食産業はこの数年で業態をはじめ様々な変化を見せています。特に、生活者の節約志向もあり、低価格化も進行しています。今回はそんな世の中にマッチしたファストフードのように券売機で買えるセルフサービスのフランス料理店に行ってきました。 私たちLINE世代はフランス料理と聞くと、金額もさながら、マナーやコースといった部分でも敷居の高いイメージがあってなかなか足を運ぶことはありません。 しかし、カジュアルなスタイルということで非常に興味が湧き、食通のばなな世代(1965年~1970年生まれ)の先輩を誘ってこの一風変わったフランス料理店へ行ってきました。 今回はそこで体験してきた世代による感覚の違いをレポートしたいと思います。
体験に選んだのは、二子玉川沿いにお店を構える、接客やテーブルマナーは一切ないというフレンチレストランです。佇まいもフランス料理のかっちりとした雰囲気がなく、ベトナムやタイ料理のような非常にカジュアルな感じだったので、先輩と少し不安になりながら入店してみました。
入り口付近には駅の立ち食いそば屋のような券売機が設置されていて、完全なセルフサービスによる食べたいメニューのチケットを事前購入するスタイルでした。席を選んで座り、周囲の様子をうかがっていると、料理が出来上がった順でチケットに記載された番号をマイクで読みあげられ、客がそれぞれ取りに行っているのです。この一連の流れは、サービスエリアのフードコートの以上のカジュアルさに戸惑いを隠せませんでした。しかし、徹底的に人件費を削減することで、安価な値段で一流のフランス料理の味を提供することを何より重視した店であると改めて理解しました。料理の種類も、前菜のカルパッチョやスープ、メイン、そしてデザートまで豊富にあり、もちろんセルフでありますが、ボトルワインなども充実していました。
当日は、先輩のオススメで、前菜にはあさりのワイン蒸し・本日のスープ・牡蠣のチーズ焼き・シーフードグラタン、メインには牛フィレステーキ、デザートにはショコラテリーヌといった具合に、フルコースでオーダーしたのですが、これまたびっくり上品かつ高級店の味で、食べ慣れている先輩も「倍の金額であってもおかしくないレベル!」と衝撃を受けていました。
正直きれいな店とも言えないですが、初めてのフランス料理体験に私自身は非常に満足していたのですが、やはり先輩は「もう少しゆっくり食べたかった」というのが本音だったようです。王道のフランス料理であれば前菜から順にでてきて一品一品、会話と共に味わいながら、というのが流儀ですが、今回は、前菜とメイン料理が同時に出てきてしまったり、バックヤードのスピーディーな対応にテーブルはあっという間にお皿でいっぱいになってしまったのです。
上世代が求めるコース料理ならではの魅力もその通りだとは思うものの、肩肘張らずに自分のペースでありたい今どきの若者の目には、相手に合わせて気を使う必要がなく、“食べたいものを食べたいときに”が可能なこのスタイルは、とても魅力的に映ると思います。現にこのお店では、フルサービスのフレンチを提供していた頃よりも、20代のお客様がぐっと増えたとのこと。本物を堪能できるのに、楽で心地よい、というこのようなスタイルは、これからの若者の心を掴むのに、なにかのヒントとなりそうな気がしました。
(先輩からのコメント)
レストランにいったというより、エンタテインメント感覚もあり、楽しかったです。もし二子玉川に住んでいたら、ちょっと散歩のついでにと立ち寄るとか、後輩くんたちに心置きなくごちそうするお店としては大いにありだと思いました。何より美味しかったですから。ただ、ゆっくり話がしたいとか、前もって予定していくお店としては選ばないですね。