自分らしさ求めるLINE世代 新アラサー世代のコト消費のこれから

■LINE世代とは ~自分らしさは、他人目線~

「LINE世代」(1992年~ 96年生まれ)は、バブル崩壊後の経済低迷期に生まれ育ったことから、経済成長に過度な期待を抱かず現状に最適化していく志向を持つ、ポストバブルならではの現実志向の持ち主だ。また、インターネットや携帯電話が急速に普及した情報化社会の申し子=デジタルネイティブ世代でもある。そして、このデジタル上のコミュニケーションのあり方がLINE世代の特徴的な自意識や価値観を形成するとともに、他世代にも大きく影響を及ぼしている。

SNSがデフォルト化したLINE世代は、複数のコミュニティから流れてくるタイムライン情報に常に接しており、その人間関係を維持することに注意を払う。そのためタイムライン上のコミュケーションは、ただその瞬間をスムーズにこなすことに重きが置かれ、浅いものに留まる傾向にある。また、どの関係にも適応できるよう、自分の色を極力出さず、「常にニュートラル」な状態を志向し、自分らしさは、他者に決めてもらうことが当たり前という傾向にある。

■コト消費のその先

すでにアラサーに突入し始めたLINE世代。上世代とは大きく異なる環境変化を経験しながら、消費行動の面でも新たな特徴を表しつつあるのではないだろうか。若者が「モノを買わない」、「モノ消費よりコト消費」といわれてからすでに久しいが、彼らが関心を示してきた“ コト”消費についてもう少し突っ込んで考えてみたい。ifs では毎年、「生活者の気分」リサーチを行っているが、2017年調査では、LINE世代の「関心のあるジャンル」として、「音楽」、「食」、「旅行・レジャー」が上位3 項目に上がっていた(グラフ1)。そこで、新たなプロジェクトとして、LINE世代が関心のあるジャンルの「コト消費」に実際に参加し、その行方について探る試みを開始した。

まず、昨年5 月に開催された若者に人気の都市型フェス「GREENROOMFESTIVAL(グリーンルーム・フェスティバル)」に参加。従来型フェスには一日中好きな音楽を聞いて騒いで踊るといったイメージがあるが、「GREENROOMFESTIVAL」はこれらとは異質の、「若者が好きなコトを詰め込んだ一種の“アミューズメントパーク”」のような場となっていた。ライブパフォーマンスはもちろんのこと、映画鑑賞やヨガクラスの開催、有名アパレルブランドの限定商品が販売されるブースの出店、さらに、人気のグラフィックアーティストによるパネルの撮影コーナーなど、提供される“コト”はさまざま。参加者はスマホ片手に仲間と写真を撮影しあい、一つの体験を終えると次の体験スペースへと移動する。それは次々アトラクションを楽しめる遊園地のようで、多くの選択肢の中から自分の興味に合わせてカスタマイズできることが、同フェスが支持される理由として考えられる。

GREENROOM FESTIVAL


※昨年5月、2日間にわたって横浜赤レンガ地区野外特設会場にて開催されたGREENROOM FESTIVAL。ヨガクラスの開催や有名アパレルブランドによるブースなども出展され、賑わいをみせていた

また、「音楽ライブのようだ」と評判の「爆音映画祭」も近年、若者に人気のコト消費だ。ライブで使用されるスピーカーを使って大音量に包まれながら映画を鑑賞するイベントだが、参加したifs社員は、「音楽ライブのような体験をすることができ、フェスに来ているような感覚になった」とリポート。終演後には、LINE世代と思われるグループから、「久しぶりに映画館に来たけど、五感が刺激されて面白かった」、「ここまでリアルな感じや迫力があるとは思わなかった」と、興奮を交えての感想が聞かれた。

映画鑑賞スタイルには、スクリーンの登場人物に声援を送れる「応援上映」という新たな上映方法が登場し、コスプレをしたりデコうちわやペンライトを持って、参加者が一体となって映画の世界を楽しんでいる。「映画館では各々が静かに鑑賞する」という常識はすでに過去のものとなりつつあり、多様にアレンジされた鑑賞スタイルが新鮮な体験型コンテンツとして受け入れられている。

■新アラサー世代=LINE世代の消費のねらいめは?

こうした若者が好む最近のコト消費に共通するのは、いかに自分たちらしく楽しめるかを考える「カスタマイズ」や「アレンジ」がキーとなってきている点ではないだろうか。これまでは、浅いつながりを濃く演出する手段として、誰もが瞬間的に盛り上がり共有できるイベントに注目が集まっていたが、これらの事例からは、もう一歩踏み込んだ細分化が求められてきている様子がうかがえる。

最新の2018年の「生活者の気分」リサーチで「2025年の暮らし」について様々な角度から聴取した際、「モノ・コト・サービスの考え方」では、「自分好みにカスタマイズできるモノを取り入れる」が1つ上の世代に次いで、LINE世代が他世代よりも高い結果を示していた(グラフ2)。自分らしさは他者に決めてもらうという受け身型ともいえるLINE世代ではあるが、将来的には「自分らしさ」を発揮し・確認できる形に進化したコト消費を実践したいと考えているようだ。

また、同じ調査の「ライフスタイル・価値観」に関しては、「これまで学んだことのない知識や技術を身につける」、「様々な人とコミュニケーションできる場を提供する」も、全体よりも高い結果が出ていた(グラフ3)。アラサー世代に突入することで、社会的な「自分」について考えはじめ、「新しいことに挑戦したい」といった気持ちが生じ始めたということかもしれない。LINE世代が、今後、より自分らしさを確認させてくれるコト消費(およびそれにまつわるモノ)への関心を加速させていくのか、さらに注視していきたい。






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