弊社ではFAクラブという会員制のマーケティング組織を運営しており、毎年中長期的に未来がどう変化していくのか、有識者にお話をうかがったり、生活者を対象に行った定性・定量調査の結果をレポートとしてお届けしています。これからお話する7つのキーワードはこれまで実施した取材や調査の結果に基づき抽出しました。
1つ目のキーワードは「解始(かいし)する」。2020年の位置づけを表しています。
時代の変わり目の中で、これまでの当たり前とこれから時代が変わっていく中でやっていかなければいけないことのズレが突き付けられています。特に大きいのは、今後個人があるべき姿と今まで培ってきた社会の仕組みが全く噛み合っていないということ。そのズレに向き合い、仕組みを変えていこうと決意を新たにしているのが2020年にあたると捉え、これまでの仕組みを解体して組み直すことを始める動きを指して「解(かい)始(し)」としました。また、弊社では毎年生活者の気分と色をかけ合わせたリサーチをしています。2019年9月に実施した調査では、増やしたい気分や感じている気分の色として、赤とオレンジが挙がりました。ポジティブには、赤はチャレンジしよう、オレンジは人と関わることを楽しんでいこう、という意味合いを持っています。ネガティブには、赤は焦りや苛立ち、オレンジは人との関わりにまつわるストレスを表します。良くも悪くも生活者はチャレンジムードの中にあることが、「解(かい)始(し)」の背景にあります。
とはいえ、世の中はどういう方向で動いていくのか。
2つ目のキーワードは「好動(こうどう)する」。生活者の基本姿勢を表すキーワードです。
今まで人々はこうあるべきだと世の中で決まっていることに合わせ行動していたと思いますが、自分がどうありたいかで動くことがこれからの基本になると捉えています。自分の置かれている状況やその時のタイミング、また、どういう領域に関わる選択なのかで選ぶことが千差万別になっており、選択も状況変化の都度行わなければならない。自分決めることができる「自由」と自分で決めなければいけない「自律」、良い面・悪い面の両面に向き合うことになると思いますが、それこそが生活者にとっての大きな課題になるので、企業のサポートが求められる領域にもなると思います。
3つ目のキーワードは「無理しない」。生活者が今後重視する感覚を指すキーワードです。
「無理しない」は日頃からある言葉ですが、自分だけではなく、自分の周りも含めて無理していないことがポイントです。「無理しない」という感覚の中に、それぞれが互いにいい感じ・心地よいという意味が入ってくる時代になると思います。自分はもちろん、誰か・どこかに無理やしわ寄せがきているのはよくない、そういう感覚のある「無理しない」です。それはまず自分や自分の身の回り、広くは地球も無理していないよねという、身近から社会、地球までが広く遠くつながっている感覚でもあります。弊社で取材した有識者の方が仰っていましたが、「無理していないかどうか」を理解するには自分自身が今どういう状態なのか自分を問える状態が大事だそうです。そういうところも必要になってくると思います。
4つ目のキーワードは「課題=ズレに向き合う」、今後10~20年間の時代感を表すキーワードです。
20世紀から21世紀の価値観へ移行する際、やはりそこのズレが生じます。そのズレに苛まれる時期が今後10年間は続くと思います。特に、個人と組織のあり方の間にはズレが生じがちですが、その背景としてバブル崩壊前に社会に出たプレバブル世代、バブル崩壊後に社会人になったポストバブル世代の価値観の違いは、大きいと思います。さらに、リーマン・ショックや震災以降に社会人になった世代ではまた価値観は大きく違ってくるでしょう。どういうタイミングでデジタル情報機器に触れたかも大きく影響して、世代ごとに大事にしていることの感覚が違っています。それぞれの世代が求める理想と現実のギャップが、今後10年で熾烈に現れてくると考えられます。
5つ目のキーワードは「ネガをポジに転換する」。これは企業に今後求められる役割を指しています。
今まで指摘したように、厳しさやズレ=ネガティブな状況が基本にあるからこそ、そうした状況を打開し、一転するようなポジティブな視点や姿勢がとても必要となります。弊社では定期的に有識者の方に今後の社会やマーケットの方向性についてお話を伺っていますが、そのお話からも社会の仕組みを変えていくにあたって企業が果たす役割や影響力への期待が大きいと感じました。それは生活者にとっての企業の魅力につながることでもあります。そういう意味でも、企業として提供する商品やサービスが社会を変える動きによりダイレクトにつながっているということに、今後一層自覚的になる必要があるでしょう。働き方改革やテクノロジーを組織にどう取り入れていくのかは、社会の仕組みを変えるという部分に特に大きくつながる部分だと思います。
6つ目のキーワードは「心の余白と充足」。先ほどの「無理しない」から転じた、生活者が今後暮らしに求めることです。
人々の心を心地良くする、気持ち良くするということがより重要な10年、20年になるでしょう。なぜならば、皆が苦しいところに向き合わなければならないからです。今も既にそうだと思いますが、生活に対して無理だな、不安だなと思っている部分が多いと思います。無理しないということは安心したい、心にゆとりが欲しいということの裏返しなので、場のつくり方やサービスの提供など、いろいろなアプローチが可能だと思います。今は街を見ていても機能や目的に縛られていたり、何をするにしても制約が多く、選択は自由な時代なのに、体験としては自由さがない場面が多くあると思います。それは、皆さん自身が窮屈に思っている部分だとも思うので、その窮屈さをどうやって解消するか、今後考えられること・できることは多いのではないでしょうか。
最後のキーワードですが、これからの伝え方の基本として「分断しない・否定しない」は大きいことだと思っています。
これまでの企業のコミュニケーションのあり方は、ターゲッティングにせよ、メッセージングにせよ、どちらかというと人やモノ・コトをある価値基準に従って府分けし、分かりやすくすることが常套手段であったように思います。しかし、それでは今後、生活者のリアリティとは大きく乖離していくのではないでしょうか。なぜならば、無理しない、心にゆとりを求めている生活者が如実に感じていることは、物事を「良い・悪い」「新しい・古い」といった具合に、はっきりと切り分け、切り替えることができないということであり、かたや良いと思っていたことが状況次第で悪いことに直ちに転じてしまうということです。そうした実感が強まる中で、現状の一面だけフォーカスして否定したり、物事の良い面・悪い面だけを取り沙汰して強調したり、AかBか二項対立的に捉え選択を迫るようなアプローチでは、決して現実的な解決策にならない。物事は常に切り分けられない多様な面を抱えているという現状を引き受けた上で、もっと良くする方法を考える。本当に難しいことですが、そういう本質的なことをますますきちんとやっていかないといけなくなっていると感じます。
2019年は、語る・発するということよりも、地道に耳を傾け、対話をすることの重要性に大きく意識が転換するタイミングだったのではないでしょうか。企業と生活者の関係性においても、地道に対話し、対峙し、何に困っているのか耳を傾け、その発展としてお互い出来ることを交換しようという、人間として顔の見える関わりが今後より重要になっていくと思います。また、世代論に関わってきますが、これまで信じ・頼りにしてきた価値観や仕組みが大きく崩れてきてしまったと不安を抱える上の世代と、これから自分の生き方にあった新しい仕組みを生み出していく動きの中にいる下の世代とでは生きている現実が相当違う。このままいくと、世代の分断はよりこの10年間でより熾烈になると思います。そうした時代に、分断に加担せず、価値観の衝突をできる限り和らげるようなメッセージやモノ・コトをいかに提供していくか。これからの社会にポジティブなムードをつくるために、企業の持つ影響力はかなり大きいと思っています。
1つ目のキーワードは「解始(かいし)する」。2020年の位置づけを表しています。
時代の変わり目の中で、これまでの当たり前とこれから時代が変わっていく中でやっていかなければいけないことのズレが突き付けられています。特に大きいのは、今後個人があるべき姿と今まで培ってきた社会の仕組みが全く噛み合っていないということ。そのズレに向き合い、仕組みを変えていこうと決意を新たにしているのが2020年にあたると捉え、これまでの仕組みを解体して組み直すことを始める動きを指して「解(かい)始(し)」としました。また、弊社では毎年生活者の気分と色をかけ合わせたリサーチをしています。2019年9月に実施した調査では、増やしたい気分や感じている気分の色として、赤とオレンジが挙がりました。ポジティブには、赤はチャレンジしよう、オレンジは人と関わることを楽しんでいこう、という意味合いを持っています。ネガティブには、赤は焦りや苛立ち、オレンジは人との関わりにまつわるストレスを表します。良くも悪くも生活者はチャレンジムードの中にあることが、「解(かい)始(し)」の背景にあります。
とはいえ、世の中はどういう方向で動いていくのか。
2つ目のキーワードは「好動(こうどう)する」。生活者の基本姿勢を表すキーワードです。
今まで人々はこうあるべきだと世の中で決まっていることに合わせ行動していたと思いますが、自分がどうありたいかで動くことがこれからの基本になると捉えています。自分の置かれている状況やその時のタイミング、また、どういう領域に関わる選択なのかで選ぶことが千差万別になっており、選択も状況変化の都度行わなければならない。自分決めることができる「自由」と自分で決めなければいけない「自律」、良い面・悪い面の両面に向き合うことになると思いますが、それこそが生活者にとっての大きな課題になるので、企業のサポートが求められる領域にもなると思います。
3つ目のキーワードは「無理しない」。生活者が今後重視する感覚を指すキーワードです。
「無理しない」は日頃からある言葉ですが、自分だけではなく、自分の周りも含めて無理していないことがポイントです。「無理しない」という感覚の中に、それぞれが互いにいい感じ・心地よいという意味が入ってくる時代になると思います。自分はもちろん、誰か・どこかに無理やしわ寄せがきているのはよくない、そういう感覚のある「無理しない」です。それはまず自分や自分の身の回り、広くは地球も無理していないよねという、身近から社会、地球までが広く遠くつながっている感覚でもあります。弊社で取材した有識者の方が仰っていましたが、「無理していないかどうか」を理解するには自分自身が今どういう状態なのか自分を問える状態が大事だそうです。そういうところも必要になってくると思います。
4つ目のキーワードは「課題=ズレに向き合う」、今後10~20年間の時代感を表すキーワードです。
20世紀から21世紀の価値観へ移行する際、やはりそこのズレが生じます。そのズレに苛まれる時期が今後10年間は続くと思います。特に、個人と組織のあり方の間にはズレが生じがちですが、その背景としてバブル崩壊前に社会に出たプレバブル世代、バブル崩壊後に社会人になったポストバブル世代の価値観の違いは、大きいと思います。さらに、リーマン・ショックや震災以降に社会人になった世代ではまた価値観は大きく違ってくるでしょう。どういうタイミングでデジタル情報機器に触れたかも大きく影響して、世代ごとに大事にしていることの感覚が違っています。それぞれの世代が求める理想と現実のギャップが、今後10年で熾烈に現れてくると考えられます。
5つ目のキーワードは「ネガをポジに転換する」。これは企業に今後求められる役割を指しています。
今まで指摘したように、厳しさやズレ=ネガティブな状況が基本にあるからこそ、そうした状況を打開し、一転するようなポジティブな視点や姿勢がとても必要となります。弊社では定期的に有識者の方に今後の社会やマーケットの方向性についてお話を伺っていますが、そのお話からも社会の仕組みを変えていくにあたって企業が果たす役割や影響力への期待が大きいと感じました。それは生活者にとっての企業の魅力につながることでもあります。そういう意味でも、企業として提供する商品やサービスが社会を変える動きによりダイレクトにつながっているということに、今後一層自覚的になる必要があるでしょう。働き方改革やテクノロジーを組織にどう取り入れていくのかは、社会の仕組みを変えるという部分に特に大きくつながる部分だと思います。
6つ目のキーワードは「心の余白と充足」。先ほどの「無理しない」から転じた、生活者が今後暮らしに求めることです。
人々の心を心地良くする、気持ち良くするということがより重要な10年、20年になるでしょう。なぜならば、皆が苦しいところに向き合わなければならないからです。今も既にそうだと思いますが、生活に対して無理だな、不安だなと思っている部分が多いと思います。無理しないということは安心したい、心にゆとりが欲しいということの裏返しなので、場のつくり方やサービスの提供など、いろいろなアプローチが可能だと思います。今は街を見ていても機能や目的に縛られていたり、何をするにしても制約が多く、選択は自由な時代なのに、体験としては自由さがない場面が多くあると思います。それは、皆さん自身が窮屈に思っている部分だとも思うので、その窮屈さをどうやって解消するか、今後考えられること・できることは多いのではないでしょうか。
最後のキーワードですが、これからの伝え方の基本として「分断しない・否定しない」は大きいことだと思っています。
これまでの企業のコミュニケーションのあり方は、ターゲッティングにせよ、メッセージングにせよ、どちらかというと人やモノ・コトをある価値基準に従って府分けし、分かりやすくすることが常套手段であったように思います。しかし、それでは今後、生活者のリアリティとは大きく乖離していくのではないでしょうか。なぜならば、無理しない、心にゆとりを求めている生活者が如実に感じていることは、物事を「良い・悪い」「新しい・古い」といった具合に、はっきりと切り分け、切り替えることができないということであり、かたや良いと思っていたことが状況次第で悪いことに直ちに転じてしまうということです。そうした実感が強まる中で、現状の一面だけフォーカスして否定したり、物事の良い面・悪い面だけを取り沙汰して強調したり、AかBか二項対立的に捉え選択を迫るようなアプローチでは、決して現実的な解決策にならない。物事は常に切り分けられない多様な面を抱えているという現状を引き受けた上で、もっと良くする方法を考える。本当に難しいことですが、そういう本質的なことをますますきちんとやっていかないといけなくなっていると感じます。
2019年は、語る・発するということよりも、地道に耳を傾け、対話をすることの重要性に大きく意識が転換するタイミングだったのではないでしょうか。企業と生活者の関係性においても、地道に対話し、対峙し、何に困っているのか耳を傾け、その発展としてお互い出来ることを交換しようという、人間として顔の見える関わりが今後より重要になっていくと思います。また、世代論に関わってきますが、これまで信じ・頼りにしてきた価値観や仕組みが大きく崩れてきてしまったと不安を抱える上の世代と、これから自分の生き方にあった新しい仕組みを生み出していく動きの中にいる下の世代とでは生きている現実が相当違う。このままいくと、世代の分断はよりこの10年間でより熾烈になると思います。そうした時代に、分断に加担せず、価値観の衝突をできる限り和らげるようなメッセージやモノ・コトをいかに提供していくか。これからの社会にポジティブなムードをつくるために、企業の持つ影響力はかなり大きいと思っています。