"マーケティング戦略アップデート第3回 世代による「サステナビリティ観」の違い"

「SDGs」や「サステナビリティ」という言葉が広く認知されてきている。新聞記事やニュース、テレビCMなどで、見たり聞いたりする機会がふえているためだ。これらの言葉は、いまや私たちの生活においてけっして無視することのできないものとなっている。

私個人としては、これらの言葉を「いま話題の流行っている言葉」として認識している。つまり、本質的な考え方や思想をきちんと理解し共感しているかというとそうではなく、たとえばコンビニで商品を選ぶ際、環境に配慮されたパッケージを使用している商品Aとそうでない商品Bが並んでいたとき、少し値段が高くても商品Aを選ぶのがクール、いまっぽい、という程度の認識である。ただ、本質的に理解はしていないものの、「サステナブルかどうか?」ということが購買判断の後押しになっているのは事実だ。このような捉え方をしている人は、きっと多いのではないだろうか。

しかし、若い世代では異なる捉え方をしていると感じた出来事があった。
とあるプロジェクトでインターネットの検索ワードのビッグデータを分析した際、10歳代後半~20歳代前半の世代の検索特徴として、「サステナビリティ企業」などという検索ワードが目立っていた。就職活動の企業選定を目的として、このワードが検索されたと予想できる。
私よりも若い世代においては、これからの人生を左右するであろう就職先を選定する基準として位置づけられているのだということに衝撃を受けた。
このように、一言でサステナビリティといっても、世代によって捉え方が大きく異なっている。本稿では、当社世代論における、「インスタ世代(1997 ~ 2000年生まれ)」「ハナコジュニア世代(1987 ~ 91年生まれ)」「団塊ジュニア世代(1971 ~ 76年生まれ)」の3世代におけるサステナビリティ観の違いについて考察する。

*****************

朝日新聞が2020年2月に実施したSDGsの認知度調査によると、ほぼ3人に1人が「聞いたことがある」という結果が出ており、特に10歳代~20歳代の若い世代の認知度が高まってきているというデータもみられた。
若い世代の関心の実態は、当社が実施した「地球環境や社会への配慮に関する意識調査」にも以下のように現われていた。

● インスタ世代は他の世代と比べて、「民族・人種」「ジェンダー」「貧困・格差」に対しての関心が高かった。おそらく、多様化する学校教育が背景になっているのであろう。
● 一方で団塊ジュニア世代は、年齢の影響もあってか「自分自身への配慮」に関する関心が高かったが、インスタ世代の関心が高い3項目に関しては、逆に関心が低いという結果がでた。
● ハナコジュニア世代については、目立った特徴が見られず全体的に関心が薄いということがわかった。
また、当社が独自に行なった「サステナビリティ」という言葉に対するイメージを深堀りした定性インタビューの結果によると、
● インスタ世代は、友人や知人など身近な存在にサステナブルな活動や発信をしている人がいて、リアリティのある言葉だと認識している。
● 団塊ジュニア世代は、「環境に配慮することは、上質なものを長く使いつづけることである」など、上品で質のよいブランド物を支持するという傾向が目立った。
● ハナコジュニア世代は、「サステナビリティ」を流行っているものとして認識しており、知らないより知っているほうがよい、知らないとダサいと思う、といったイメージをもっていた。

*****************

このように、世代によって捉え方やスタンスの違いが明確に現われていることから、企業やブランドが「サステナビリティ」を全方位的にアピールしても、消費者の心に刺さるとは思えない。ターゲット(世代)による価値観の違いを理解し、刺さるコミュニケーションを行なう必要があるのではないだろうか。
現在当社では、ビッグデータを活用した調査を進めると同時に、長年消費者と向き合ってきたノウハウを活かした分析を組み合わせることで、消費者(N1)の関心や価値観の解像度を上げて未来の市場を読み解き、今後も発信を続けていく予定だ。

著者情報

伊藤忠ファッションシステム㈱ 第1 ディビジョン マーケティング開発第1 グループ  デジタルマーケティングコンサルタント ファッションECモール、大手アパレルメーカーにてEC運営、U・I UX改善、CRM 領域を中心としたデジタルマーケティングを経験後、現職に至る。事業会社での経験を活かし、生活者視点から、顧客接点の最適化・ロイヤルティ向上を軸としたマーケティングに従事。1990 年生まれのハナコジュニア世代。趣味はスニーカー収集で、コレクションは100足以上。

この著者の記事

無料メルマガ登録はこちら!

ビジネスリーダーに役立つ記事やブランドマーケティングに関する情報などを随時お届けしております。

ページの先頭に戻る

お気軽にお問い合わせください

ブランド開発、マーケット開発、クリエイティブ開発に関する
ご相談を受け付けております。