■ジェネレーションZの特徴
ワシントンDCを拠点に、人々の問題意識や意見、傾向に関する情報を調査するシンクタンク「Pew Research」によると、2020年に労働人口の4割を占めると言われているジェネレーションZは、自他共に認めるスマートフォンネイティブ。幼少期に既にインターネットやスマートフォンが家庭に普及した環境で成長したため、ソーシャライジングの大半をソーシャルメディア上での相互コミュニケーションに費 やすのが特徴。また、サービスのスピードを重視する点がミレニアル世代と異なる。一方で注意力が散漫で飽きやすく、長く持続しない、動画や画像によるコミュニケーションを好み、長文のテキストは苦手といった特徴も指摘されている。また、Facebookのようなネット上でのアクティビティが残るオープンなSNSを敬遠し、スナップチャットのように時間がたてばすぐに消えるようなサービスを好む。
ジェネレーションZの64%が「人生の中でスマートフォンが最も重要なもの」であり、45%が「ソーシャルメディアが最も重要」だと回答。また、全米ティーンの92%が日々オンライン上にサインアップしており、24%が常に絶え間なくオンライン上にいると答えた。「スマートフォン」、「オンライン」、「ソーシャルメディア」がジェネレーションZの第一のキーワード。
■ソーシャルメディアがラグジュアリーを教示・定義するツールに
ジェネレーションZには、芸能人やモデルを起用した従来の広告やプリントによる宣伝は響かず、等身大のブロガーやインフルエンサーによるより「リアル」なソーシャルメディア上のメッセージを重要視し好む傾向にある。これはまず、ジェネレーションZのコミュニケーションのベースにスマートフォンがあり、ソーシャルメディアのない世界に存在したことがない彼らにとって、スマートフォンという媒体を通してソーシャルメディアで他者との強い繫がりを求める基本的行動が根底にあり、ソーシャルメディアを活用した宣伝の加速に繫がっている。ソーシャルメディアは、これまでのマスメディアや広告に取って代わり、若い消費者にラグジュアリーとはどんなものでどんな感じであるべきか、何が望ましく何に価値があるのかといったラグジュアリーを教示し定義するツールとなった。
■現実的であること、共感できること
ジェネレーションZは、他世代に比べリアルな人々の生の声に耳を傾け、それを自身の購買の判断基準にする傾向が強い。例えば、ジェネレーションZの65%がソーシャルメディア上で商品のレビューをシェアし、参考にしていると回答している。これは、広告を意識したセレブや専門家の声よりも、実際のリアルなユーザーの意見に共感する傾向を顕著に表している。また、ありのままの体型をポジティブなものとして捉え、受けいれる流れ「ボディポジティビティ」を支持しているのもこの世代の特徴であり、昨今のプラスサイズモデルの台頭もこのボディポジティビティのトレンドの流れから派生した。
またリアルな人々に共感する彼らを取り込む戦略として、ファッション業界ではH&MやAerieといったブランドを皮切りに、Gucciも2017年のPre Fallコレクションのモデルをストリートでみつけた“リアルな人々”をキャストする傾向が強まってきている。
事例1 Stella McCartney’s Pop Fragrance
Stella McCartneyは、個々、本物、冒険をテーマに新しいフレグランス「POP」を昨年ローンチ。キャンペーンに際して次世代のロールモデルを代表する4人(ポップミュージシャンGrimes, マドンナの娘Lourdes Leon、Quincy Jonesの娘Kenya Kinski-Jones, 女優Amandla Stenberg)が香水の顔に選ばれた。ブロンド、パープル、ピンク、ブラックヘアをなびかせて踊るモデル達は、ジェネレーションZを代表する独立精神旺盛で、其々のパーソナルスタイルを確立しているリアルな等身大である。
事例2 Sports Illustrated誌がプラスサイズモデルを表紙に起用
タイムワーナーが発行するアメリカで最も人気のあるスポーツ週刊誌。そのSports Illustrated誌が人種、年齢、体型を超越したあらゆる女性モデルを水着特集に掲載し、多様性の美しさを訴えた。かつてはスーパーモデルの登竜門といわれたSports Illustrated誌が、リアルで多様化した女性モデルを起用したことであらゆるメディアで話題を呼んだ。■透明性とエシカルな活動
ジェネレーションZはミレニアルズと同じく大量消費を嫌い、自分の購買が社会貢献に繋がっているかを大事に考える。モノも製造過程や透明性に拘り、作り手と買い手の間で搾取のないことを重視し、少量生産、地元産やサステーナブル(持続可能性)に拘る。ジェネレーションZの88%は、ブランドは社会、環境への負担をかけないだけではなく、率先してエシカルで社会貢献するべきだと考えている。また政治に絡んだポジティブなメッセージを発信するべきだとも考えている。■ラグジュアリーブランドが配信する新しいコンテンツプラットフォーム
ラグジュアリーブランドは、若い世代を惹き付けるためにジェネレーションZの言語を使用した新しいコンテンツプラットフォームを配信し始めた。短くて気軽に楽しめるビデオコンテンツ“snackable “ビデオ、色鮮やかで、ファンが何かしらの行動を起こしてくれるような魅力のあるコンテンツやティーン世代がコネクトするようなインフルエンサーを起用。
事例 F is for Fendi
Fendiは、新しいコンテンツポータルサイト「F is for Fendi」をウェブ上にローンチした。このプラットフォームには5つのF(Freaks, Fulgores, Faces, Freedom, Fearless)をコンセプトに異なるコンテンツを展開。“本物であること”、“フィルターにかけられていない画像”、“都市ガイド”、“iPhone7で撮影されたエディトリアルイメージ”、音楽、アートや文化にもアクセスできる。消費者がアイディアの交換をでき、包括的な観点を提供するプラットフォームになっている。その他にもLouis VuittonやDiorなどのラグジュアリーブランドもジェネレーションZを対象にコンテンツのフォーマットをビデオ、画像やVblogといった視覚で楽しめる短い映像コンテンツに変え始めている。
ジェネレーションZにとってのラグジュアリーの定義は、「現実的」「共感」「繫がり」「透明性」「エシカル」「本物」「パーソナリゼーション」「時間」「経験」。従来の商品を全面に押し出したおしきせの宣伝には興味がなく、自分がコネクトできたり尊敬できたりするようなリアルな人々が発信するライフスタイルやその発言に価値を見出す傾向にある。