■愛犬は「我が子」という意識の強いミレ二アル世代
The American Pet Products Association (https://www.americanpetproducts.org/)の調べによると、現在米国の家庭では、70%以上がペットを飼っている。その内6020万人が犬を、4710万人が猫を飼育。今日の米国に於いて、ペットオーナーの大多数が「ペットは家族の一員」という認識を持っている。また、米オンライン証券TD Ameritrade(https://www.tdameritrade.com/)が発行したレポートによると、ミレ二アル世代の10人に7人がペットオーナーで、その内56%が犬の飼い主、36%が猫の飼い主であることが分かった。ミレ二アル世代にとって、犬や猫は単なるペットではなく、我が子という意識が強い。ミレ二アルズのペットオーナーの82%は、ペットを迎えることは、家族を持つ準備の一端だと考えるという。かつての現ミレニアル世代の20代半ばから30代半ばと言えば、結婚し、子育てに追われる年代であったが、昨今では過去と比べ状況が違ってきているようだ。トレンド調査会社Cassandra(https://cassandra.co/)のディレクターで、自身もミレ二アル世代のEmily Anatoleさんによると、年々、子育てにお金がかかる今、子供を持つ時期を遅らせたり、子供を持たないと決めたこの世代は、代わりにペットを飼うことを選択しているという。彼らは、年々増える可処分所得を、ペットやペット関連用品に注ぎ込む傾向にある。
■より高価でプレミアムな商品を求める動き
「Premiumization」の高まり
この新たな家族の誕生によって、ペット小売市場も益々成長を遂げている。The American Pet Products Associationによると、2016年の米国におけるペット関連用品の売上げは、約667億ドル、2017年は約695億ドルを記録し、2007年の412億ドルから大きく増加。この背景には、ミレ二アル世代のペットオーナーの消費が後押ししていることは言うまでもない。彼らは、自分達の買い物と同様に、ペットにもラグジュアリーなベッド、首輪、胴輪、散歩紐、玩具、デザイナーズブランドの洋服、トラベルアクセサリーやギフトを与え、医療費や薬の他に、グルーミングやスパ、デイケアサービス等も定期的に利用する。ここに興味深いデータがある。2017年、14%のミレ二アル世代のペットオーナーが、ペット用のラグジュアリー商品を購入。この数字は、18%のミレ二アルズの親が高価な子供服を購入した割合とさほどかわらないことを指している。現在ペット用品に於けるトレンドは、より高価でプレミアムな商品を求める”Premiumization”が急激な高まりをみせている。Premiumizationの事例1
◇Moncler Genius x Poldo Dogコラボhttps://hypebeast.com/2018/11/moncler-poldo-dog-couture-fall-winter-2018
ダウンを主力商品とするイタリア発のハイエンドブランドMonclerと、同じくイタリア発ハイエンドペットブランドPoldo Dog Couture(https://www.poldodogcouture.com/)が協業し、2018年-2019年秋冬向けにコレクションを発表し話題を呼んだ。寒い冬のお散歩中も外でおもいっきり楽しめるようにと、Monclerブランドのアイコニックなトリコロールがデザインされたフード付きパファージャケット、カラフルなリバーシブルダウンベスト、フード付きのスウェットを展開。全てのアイテムにはMonclerのロゴ付き。価格$425-$560
Premiumizationの事例2
◇Heron Preston x Very Important Puppiesコラボhttps://fashionista.com/2019/03/dog-clothes-fashion-brands-trend
デザイナー、アーティスト、クリエイティブ・ディレクター、DJとして幅広く活躍し、Off-White等と並んで、ストリートシーンを牽引し、益々その活動が注目されるHeron Preston氏が手がける自身の冠ブランド「Heron Preston」(https://www.heronpreston.com/)が、NY発、Sabrina AlbarelloとKaterina Karelas姉妹によって設立されたハイエンドペット用品ブランド「Very Important Puppies」(https://www.veryimportantpuppies.dog/)とコラボ行い、ストリートウェアにインスパイアされたハイエンドなドッグウェアコレクションを発表。Heron Prestonのシグ二チャーアイテムの数々がペット服になった。PVC素材を使用したオレンジのレインコート、ロシア語で“style”を意味する”стиль”が首元に刺繍されたタートルネック、フーディ、同ブランドのロゴが付いたリードやお散歩用のエチケット袋など、愛犬と一緒にHeron Prestonのコーディネートが楽しめる、ファンにはたまらないコレクションだ。価格:$13-$182
Premiumizationの動きは、犬用の高級服やアクセサリーに留まらず、ペットフードにも現れている。ミレニアル世代は他世代と比べて、より高価なドッグフード求める傾向にある。それは、ヘルスやウェルネスに拘るこの世代が、自分達の食生活と同様に、健康に配慮した質の高いプレミアムフードやナチュラルなドッグフードをペットにも与えたいと考えているからだ。マーケティング・リサーチ会社「Nielsen」のデータによると、高級な食材、グルテンフリーフード等を使った新しいブランドがドッグフード業界に参入した2007年から2017年の間、家庭に於けるペットフードの費用は36%増加。一方で、この消費行動のシフトにより、Mar’s Pedigree, Nestle’s Purina, Smucker’s Gravy Train, Kibbles’n Bitesといったメジャードッグフードブランドの売上げが減少している。
Premiumizationの事例3
◇Ollie:ペット個々のニーズに合ったテーラーメイドのドッグフードサブスクリプションサービスhttps://www.myollie.com/
ペットの健康をミッションに掲げ、ペットフード業界にディスラプションを起こしているのが、2016年10月にRandy Jimenez, Alex DouzetとGabby Slomeの3人によってNYを拠点に設立されたDirect to consumer プレミアムペットフードブランド。非常に高品質な食材を使用し、獣医やペット栄養士と共に、最も新鮮で最も栄養素がいきわたるような調理方法で、バランスのとれたヘルシーなレシピを開発し、さらに独自のアルゴリズムで、犬の年齢、大きさ、犬種、体形成、アクティブレベルやアレルギーを分析し、各々の犬に必要な栄養素を満たしたミールプラン4種類(ビーフ、チキン、ターキー、ラムの4種類をベース)を提供することを可能にした。また、ドッグフードに使用されている食材を生産段階から最終消費段階まで追跡・管理し、透明性の開示や最大限の安全性と栄養素を提供することに努めている。2017年までに、シリーズA投資で合計1700万ドルの資金調達に成功し、ドッグミールプランのほかにもスナック等も展開し始めた。
価格:チワワミックス犬(5kg)の場合、100%Ollieのフードへの切り替えをした場合のコストは、一週間$23.83から。その他にも50%、25%の切り替えプランもある。
Premiumizationの事例4
◇The Farmer’s Dog:新鮮でバランスのとれた犬用のミールプランデリバリーサービスhttps://www.thefarmersdog.com/
https://www.forbes.com/sites/glendatoma/2019/01/15/the-farmers-dog-raises-39-million-in-the-largest-series-b-round-for-a-pet-startup/#2b8eb3cb53ac
ブルックリンを拠点にBrett Podolskyと友人のJonathan Regevが設立したカスタマイズ ドッグフードのサブスクリプションサービス。ビジネスのきっかけは、Podolsky氏が飼っていた愛犬Jadaが市販のドッグフードで慢性の消化不良をおこし、獣医の薦めで手作り食を与えたところみるみる回復。高品質で信頼のできるペットフードブランドを探したが、当時市場に求めるものがなかったことから、自分達でペットのためのオールナチュラルな健康食品ブランドを立ち上げるに至った。The Farmer’s Dogが使用している食材は全て、地元の農園や信頼のできる食品供給者から調達し、USDA(米国農務省)基準を通ったもののみを使用。ターキー、ビーフ、ポークベースのオリジナルレシピは、獣医やペット栄養士がビタミンやミネラルのバランスを考え監修し、USDA認証のキッチンで、低温で丁寧に調理し、パックして発送。市販のドッグフードのように、防腐剤入りで数ヶ月も陳列されているものとは鮮度が全く異なる。利用方法は、ウェブサイト上の簡単な質問事項に答え、ペットの年齢、体重、アクティビティなどを入力し、そのペットにあったベストなミールプランや購買のサイクルを選択する。価格はペットの年齢、体重、アクティビティによっても異なるが、一週間$29~から。
現代の消費を担うミレニアル世代の台頭は、今後もペット業界にも大きな影響を与え続けていくであろう。