米国で拡大する次世代教育:STEM教育

■米国に於けるSTEM関連の職種の需要と成長率

アメリカ合衆国労働統計局The U.S. Bureau of Labor Statistics(https://www.bls.gov/ )が行った調査によると、STEM関連の職種の成長率は、2010年から2020年の10年の間に、18.7%の成長率を見込み、これに対して全職種の成長率は、14.3%の成長率を見込んでいることが分かった。
米国に於いてScience(科学), Technology(技術), Engineering(工学), Mathematics(数学)の従事者は、米国経済の持続的な成長と安定に重要な役割を果たし、米国が未来を勝ち取ることを手助けする重要な人材だとみなされている。現に、給与にもその格差が顕著に表れている。アメリカ合衆国労働統計局の調べによると、2018年、米国に於ける全職種の年間平均所得は$38,640。一方で、STEM関連の職業に就く者の平均年間所得は$84,880, STEM以外の職種の年間平均所得は$37,020であった。STEM関連の職種の需要は、今後も益々伸びていくと予測される。(https://www.bls.gov/emp/tables/stem-employment.htm#ep_table_101.f.1

■STEM教育とは

STEM教育とはcourtesy of Martial Red/Shutterstock.com
https://www.nsf.gov/news/news_images.jsp?cntn_id=295999&org=NSF
STEM教育とは、Science, Technology, Engineering, Mathematicsの頭文字をとり、其々の教育分野を総称する語で、IT社会とグローバル社会に適応する理数系分野の人材育成を目指す21世紀型の次世代教育システム。米国に於いては、初等教育から高等教育まで広い段階で導入されている。
その始まりは、2001年頃、アメリカ国立科学財団(https://www.nsf.gov/)がSTEM教育を重要視し、2006年ブッシュ前大統領が、一般教書演説の中で、American Competitiveness Initiative(米国競争力イニシアチブ)(https://georgewbushwhitehouse.archives.gov/stateoftheunion/2006/aci/index.html)を発表し、STEM教育発展の為、連邦政府の支援を強化する意思を示した。その後、オバマ前大統領が就任中に、米国の主要な教育政策としてSTEM教育を国家戦略として掲げ、その財政支援を連邦政府レベルで積極的に実施したこと(年間30億ドルを投入)で米国内で一気に拡大をみせた。何故米国で国家レベルでSTEM教育が推進されるのかというと、その背景には、まず、国の未来の競争力低下に対する危惧、STEM関連の職種の需要が高まる一方で、人材が不足していることやSTEM教育のカリキュラムとそれを教える教員の不足等が主として挙げられる。
STEM教育のプログラムでは、タブレットに触れるだけでなく、ロボットの組み立て他、プログラミングやコーディングの授業を加えたり、教科書の内容を今の技術に即したものへと改訂したりして施策を打っている。2018年、The U.S. Department of Educationアメリカ合衆国教育省(https://www.ed.gov/)によると、トランプ大統領は、全米のすべての子供がSTEM教育を受けれるように、年間2億ドルの補助金を出すように教育省に指示をした。

■“自分で学び理解していくこと”を核とする
STEM幼児教育の拡大

courtesy of Jason Fochtman, Staff Photographerhttps://www.chron.com/neighborhood/woodlands/business/article/Local-business-offers-STEM-classes-to-toddlers-12794100.php
STEM教育は、“自分で学び、理解していくこと”を核とし、論理的・客観的・合理的に思考を展開する“批判的思考”を培い、自発性、創造性、判断力や問題解決能力を高めることを教育理念に掲げている。次世代のイノベーター教育プログラムとして、幼少期からSTEM教育に触れることで、STEM分野への知識や関心を高めるだけでなく、今後ますます需要が高まると予測されるSTEM関連の職業への就職にも有利だと考え、幼少期から子供にSTEM教育を受けさせたいと考える保護者が近年増えている。

■STEM教育にフォーカスした体験施設事例

Robofun

(https://www.robofun.org/)
2672 Broadway Loft A, New York, NY 10025
courtesy of Robofun
https://www.google.com/search?q=robofun&rlz=1C1GCEU_enUS859US859&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwi1mqCz49_jAhWEg-AKHbCBBzAQ_AUIEigC&biw=1366&bih=657#imgrc=6yrIWJ4uAJ28wM:
https://www.robofun.org/blog-1/2019/5/1/robofun-stem-lego-robotics-coding-amp-game-design-stop-motion-animation-minecraft-amp-circuitry-summer-camp-program
Robofunは、ハーバード大学院教育課程卒、MIT Media LabコラボレーターLaura Hart女史が、1998年、NY市内で設立したSTEM教育を実地体験から学べる教育施設。自身の母としての経験から、私立や公立学校で習うSTEM教育の補足及び、その知識を強化する場所が必要であると痛感し、Robofunの設立に至ったという。
LauraとRobofunチームは、ワクワクするような素材やツールを使用して、楽しみながらものを組み立てたり、作ったりすることを介して学ぶことが、子供にとってベストな学習方法だという信念を持っている。さらに、教師陣が子供一人ひとりの学習スタイルや能力を理解し、個々の学習ペースにあった環境を提供することを最重要視している。また、他の生徒とのコラボレーションやチームワークを推奨し、決して諦めないこと、自信をつけさせることに焦点を充て、子供達の自発性、創造性、問題解決能力を高めるプログラムの研究に日々余念がない。
Robofunの施設は、マンハッタンのアッパーウェストサイド地区に位置する。(ロケーションは現在、アッパーウェストサイドのみ)。同施設は、3歳から12歳を対象に、ロボットの組み立てやプログラミング制作、ビデオゲームのデザインや構築、ゲームやアニメーションの技法であるストップ・モーションアニメーションの制作を通して、エンジニアリング、コーディング、そしてクリエイティブシンキングを養うプログラムを提供している。Robofunでは、上記のようなクリエイティブなアフタースクールプログラムの運営だけでなく、NY市内の100以上の学校の教師陣を対象に、STEM教育に特化した指導者の育成も行っている。

Engineering for Kids

https://www.engineeringforkids.com/
Engineering for Kids
https://www.engineeringforkids.com/
https://www.milehighmamas.com/blog/2018/02/23/preparing-our-kids-for-big-futures-at-engineering-for-kids-summer-camp/
Engineering for Kidsは、2009年、テクノロジーと数学教育に幅広い知識を持つDori Roberts女史よって設立されたSTEM教育に特化した教育施設。Doriは、ヴァージニア州の地元の高校で教師としてエンジニアリングを11年以上教えてきた実績を持つ。その間に、生徒達はDoriのアドバイスのもと、数々の賞をTechnology Student Association(https://tsaweb.org/tsa)(中学生から高校生までのSTEM学問を専攻する生徒のメンバーから成る非営利組織)が主催するコンペで獲得。
Doriは、ある時、自身の息子と娘が通う小学校で、放課後に橋のモデルづくりを行う土木工学のクラスを開講。クラスは瞬く間に満席になり、授業後、生徒の親達から非常にポジティブな感想を得たことがきっかけとなり、子供を対象としたSTEM教育施設Engineering for Kidsの設立に繋がったという。
Engineering for Kidsでは、4歳から14歳までを対象に、航空宇宙工学、化学工学、土木工学、エレクトリックゲームデザイン、環境工学、船舶工学、ハードウェア工学、機械工学、ロボット工学やソフトウェア工学をトピックスにデザインされた、STEM教育プログラムを介して、子供達のやる気と自信を引き出し、公の場での緊張や不安を解き、チームワークスキルの向上、新しいスキルを学ぶモチベーションを高めることを目的としている。同施設では、サマーキャンプ、誕生日会、放課後のプログラム、夜間のクラスを地元のコミュニティセンターや学校で開催。現在創立者のDoriのコンセプトは、フランチャイズ化し、世界150のロケーションで展開中。
今後もSTEM教育に特化した教育施設が続々と誕生するのではなかと予測する。



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