American Express社が発行した「2018 State of Women-Owned Business Report」によると、2017年から2018年の間に、米国では1日平均1,821もの女性起業家による新しいビジネスが誕生している。また、1972年から2018年にかけて女性が経営する企業の数は40.2万 から1230万の31倍となり、劇的に増加していることが分かった。また、約12年前の2007年から比べると、その数は58%以上の成長を遂げ、非常に大きな前進を遂げていることが分かる。
https://about.americanexpress.com/files/doc_library/file/2018-state-of-women-owned-businesses-report.pdf
今回のレポートでは、ビューティー・ウェルネス分野に於いて、自らの信念を貫き活躍する女性起業家数人にスポットライトを当ててご紹介させて頂きます。
■資生堂が8億4500万ドルで買収したクリーンビューティスキンケアブランド「Drunk Elephant」
https://www.drunkelephant.com/https://www.forbes.com/sites/chloesorvino/2019/10/08/hot-skincare-brand-drunk-elephant-sells-for-845-million-minting-founder-a-fortune/#5a2fddc55140
https://fashionista.com/2018/03/tiffany-masterson-drunk-elephant-skincare-sephora
昨年10月、資生堂が米クリーンビューティスキンケアブランド「Drunk Elephant」を8億4500万ドル(915億円)で買収したニュースは記憶に新しい。一時、同ブランドの時価総額は10億ドルとも言われEstee LauderやUnileverが有力な買収候補先として上がっていたが、最終的には資生堂がこの買収劇を制する形となった。
*Drunk Elephantに関する記事は、2018年「米国発、新進サプリメント・スキンケアブランド」のレポートで取り上げさせていただきました。
Drunk Elephantは、2012年、テキサス州ヒューストンを拠点に、主婦で4人の子供の母であるTiffany Mastersonが設立したクリーンな原料のみを使用したクリーンビューティスキンケアブランド。Tiffanyは、自身の肌に合わない“Suspicious 6”と呼ばれる6つの原料(エッセンシャルオイル、香料/染色、シリコン、ケミカルスクリーン、SLS (ラウリル硫酸ナトリウムとアルコール)を突き止め、毒素を含まない原料、クリ二カルブランドと同じように“効果効能”があるもの、そしてナチュラルブランドと同じように“安全”で、6つの原料を含まないスキンケアラインを開発。
Drunk Elephantの商品は、食事に於いてだけでなく、コスメに於いてもサステナブル、余分なものを取り除いたクリーンでピュアな商品を求めるミレニアル世代や、Z世代の意識の高い消費者から絶代な人気を誇っている。
2017年3月、サンフランシスコを拠点とする未公開株式投資会VMG Partners (http://www.vmgpartners.com/)から、830万ドル(8.3億円)の資金を調達したDrunk Elephant は、2019年、売上高1億ドル(108億円)を記録。Drunk Elephantは、女性起業家によるクリーンビューティーブランドとして最も成長の早いプレステージスキンケアブランドの一つになった。
■サンスクリーン業界に革命をもたらした初のプロテクティブスキンケアブランド「Supergoop」
https://supergoop.com/https://www.forbes.com/sites/jenglantz/2018/09/25/former-teacher-becomes-entrepreneur-eager-to-disrupt-the-sunscreen-industry-with-supergoop/#1cdca6d56e6b
https://www.allure.com/story/supergoop-family-and-friends-sale
昨今、世界的に皮膚ガンに関する認知度は上がっているにもかからず、皮膚ガンを発症する患者は年々増加を辿っている。そのような状況を少しでも改善したいとの想いから、日焼け止めの日常使用の重要性を啓蒙することをブランドの企業理念として掲げ、サンスクリーン業界にディスラプションを起こしているのが、2007年テキサス州サンアント二オを拠点に元教員のHolly Thaggardによって設立された初のプロテクティブスキンケアブランド「Supergoop」だ。
「Supergoop」設立の背景には、Hollyの親しい友人が30代前半でメラノーマ(悪性黒色腫で悪性皮膚がんの一つ)を発症したことがきっかけとなり、日焼け止めの開発に携わり始めた。皮膚ガンは米国で最も多いがんであり、皮膚がんの大半の原因は、日常の肌の露出によるところが多く、予防するためには日常のSPFサンケアが重要だということを実感させられたという。また、元教員で母親でもあるHollyは、友人の皮膚科医から“サンダメージは幼少の頃から蓄積される”事を学び、自身の子供達、そして生徒達が屋外での活動時に浴びるサンダメージから肌を守る為に、地元の公立学校に日焼け止めを寄付することを新たな使命とし、人々に日焼けに伴うリスク、サンケアの重要性と安全性に於ける意識や関心を高めさせ、有害な紫外線から皮膚を防御するデイリーに使えるサンスクリーン開発の必要性を感じたことがSupergoop設立の背景にある。
ヴィーガン、クルーエルティーフリー、環境と人に優しいクリーンなサンスクリーンの誕生
従来の日焼け止めについて調査を進める中、人々が日焼け止めを体に塗りたくない理由が、“日焼け止めのべたべたした感触”、“重いテクスチャー”、“白浮きや匂いが好きではない”からだということが分かった。そこで、Hollyは、歯ブラシや洗顔のように日焼け止めも毎日の習慣の一部にするべきだと考え、化学者と共に研究を重ね、多くの日焼け止めに使用されているオキシベンゾン(有害指定化学物質の一つ)やパラベンの使用は一切せず、独自の製法で有害元素(太陽光、赤外線、ブルーライトや汚染)を防御する革新的な成分の開発に成功。クリーンでさらっとしたつけ心地で大人から子どもまで使えるサンケア商品Supergoopを世に送り出した。Supergoopは、2018年、4000万ドル(40億円)の売り上げを記録。この数字は、前年2017年の2倍にあたると言われている。また、直近では2018年3月にElizabeth Street Ventures(https://elizabethstreet.vc/)とWilliam McClellandから、また4月に同じくシリーズB投資としてSWAT Equity Partners(https://www.swatequitypartners.com/)から資金を得ている。(投資額の開示はなし)。
Supergoopは、公立学校に無料でサンスクリーンを寄付する慈善活動を自社のOunce by Ounce Project(https://supergoop.com/pages/ounce-by-ounce) を通じて行い、米国の公立学校に於けるサンスクリーンの使用率の向上及び、今後の米国に於ける皮膚ガンの発症率を抑えることに尽力を尽くしている。
■デオドラント業界に革命を起こした「Schmidt’s 」
https://schmidts.com/https://www.beautyindependent.com/schmidts-naturals-soaps/
https://www.unilever.com/news/press-releases/2017/unilever-to-acquire-schmidts-naturals.html
Schmidt’sは、2010年Jamie Schmidtによってオレゴン州ポートランドで設立されたナチュラルデオドラントブランド。口に入れる食品と同様に肌に塗るものもクリーンでピュア、ケミカルフリーのものを使用したいという、ミレニアル世代から絶大な支持を獲得し、それまでの退屈でつまらないデオドラント業界にディスラプトを起こした。
Schmidt’s設立の経緯は、創立者のJamieがナチュラルでありながらきちんと効果がある制汗剤を探していたところ、汗や匂いを抑える効果が実感できなかったり、香りのバリエーションが少なく使いたいと思えるような商品に出会えなかったことから、自身が使いたいと思うクリーンでピュアなプラントベースのナチュラルデオドラントを作り始めたのがはじまり。ブランド設立当初は、自宅キッチンで作り、瓶にいれて地元ポートランドのPortland Farmer’s marketで販売していた。
認証ヴィーガンでクルエルティーフリーデオドラントの誕生
Schmidt’sのデオドラントは、体に優しい植物やミネラル由来の革新的な成分を配合した認証ヴィーガンでクルエルティーフリー。また、アルミニウム、プロピレングリコール、PEG, パラベン、フタル酸エステル、人工香料、人工着色料の使用は一切していない。同社のデオドラントは、効果が持続すること、そしてそのナチュラルでユニークな香りと香りのバリエーションが豊富なことが特徴。人それぞれ体の化学反応はユニークで、1種類の匂いだけでなく、様々な人に合う香りのオプションを用意したという。モダンなパッケージも相俟って、マーケットでも好評を呼び、その後、Target, Wal-mart, Wholefoods, Costco, CVSでの取り扱いが決まり、各店舗の商品棚にSchmidt’s旋風を巻き起こした。ブランド名をSchmidt’sからSchmidt’s Naturalに変更し、ナチュラルパーソナルケア・ホームケアブラントして確立
2013~2014年にかけては自社のe-commerceサイトの売り上げも爆発的に伸び、ビジネスを順調に拡大。2017年には、ブランド名をSchmidt’sからSchmidt’s Naturalに変更し、商品カテゴリーもナチュラルソープ、歯磨き粉、オーラルケア、ホームケアを追加し、ナチュラルパーソナルケア・ホームケアブラントして確立していった。同社の著しい成長は、ベンチャーキャピタル、プライベートエクイティ、世界有数の一般消費材メーカーの目に留まり、投資及び買収の話が多々あったようだが、2017年、Unileverとパートナーシップを結び、その傘下(買収金額は未公開)に入った。現在Schmidt’s Naturalは、年率300%の成長を見せ、世界30カ国以上1,400以上の店舗で展開されている。Schmidt’s Natural 創立者のJamieは現在、夫のChris Cantinoとともに、次世代の経営者・起業家をサポートする投資ファンドColor(https://color.capital/)を設立。