ミレニアル世代のノンアルコールライフスタイルsober-curious

新型コロナウィルス感染症のパンデミックを受けて、多くの人々が自宅で過ごすことを強いられた事で、ワインやスピリッツを含むアルコール飲料の売上高が上昇しているという。市場調査会社NPD Group(https://www.npd.com/wps/portal/npd/us/home/)によると、4月の米国に於けるアルコール飲料の消費量は、前年比50%増。また、一方で、外出自粛中にアルコール量を減らす事に挑戦している人も多く、ノンアルコール飲料の売上も年々増加傾向にあることが分かった。ドイツのハンブルクを拠点に、市場調査や消費者動向に関するデータや統計を提供するStatistaのデータ*によると、2020年、全世界のノンアルコール飲料市場の総売上は、1兆ドル(107兆円)を達成し、2020-2025年の市場の年平均成長率は6.8%と予測されている。* https://www.statista.com/outlook/20000000/100/non-alcoholic-drinks/worldwide
今回は、コロナ禍にあってミレニアル世代を中心にノンアルコール飲料の消費が増加している事に焦点を当て、ミレニアル世代のノンアルコールライフスタイルの動向と、話題のノンアルコールブランドをレポートさせて頂きます。

■米国に於けるワイン消費量が25年ぶりに減少

飲料市場の分析会社IWSR(https://www.theiwsr.com/)によると、2019年、米国に於けるワインの全体的な売上額は前年度の3,830億ドル(約4兆円)から1.1%上昇しているものの、2019年のワインの購入量は0.9%減少していることが判明。これは1994年以来初の低下だという。この背景には、危惧される健康への影響、そして、缶やペットボトル入りのお茶、スパークリングウォーターやコーヒー等のその他飲料の需要増加が原因に挙げられる。また、ワインの代替として、炭酸水、ノンアルコールカクテル、ノンアルコールビール等を好むミレニアル世代の人口が、ワインの消費量が多いブーマー世代の人口を超え、世代のシフトが起こったこともワイン購入量の減少の主要な起因とみている。

■ノンアルコールドリンク“mocktail”の人気

2020年の飲料トレンドは、アルコール度数の低い”low”飲料またはノンアルコール飲料といったマインドフルな飲料がトレンド入りしている。スピリッツブランドBacardiの2020 Cocktail Trends Reportによると、アルコール度数の低い飲み物が人気で、Google検索に於いては“mocktail”(見せかけという意味のmockとcocktailを掛けた造語。フルーツジュースやソフトドリンクを用いたカクテルにみせかたノンアルコールドリンクの意)の検索が昨年に比べて42%も増加していることが挙げられている。

■新トレンド、あえてお酒を飲まない
“sober-curious”

マーケティングリサーチ会社Nielsen(https://www.nielsen.com/us/en/)のデータによると、昨年、ミレニアル世代の66%が、アルコールの消費を少なくしようと試みていると回答。また、米国人のおおよそ4分の1が、年明けの1月にアルコールの摂取を控えることを人々に促す公衆衛生キャンペーンDry January運動に参加する予定だと答えた。昨今、ミレニアル世代を中心に、あえてお酒を飲まない人々、少量しか飲まない人々を指す“sober-curious”(かつてはウェルネスバズワードであった)と呼ばれる人々が増え、健康やウェルネスの観点から“あえて飲まない“が彼らの中でムーブメントとなり、飲酒習慣を改善しようとする流れが顕著だ。

■話題のノンアルコールブランド事例

NY発のコスメブランドGlossier出身者が設立したノンアルコールアペリティフブランドGhia

https://drinkghia.com/
Ghiaは、NYを拠点にMelanie Masarin氏によってパンデミック禍に設立されたノンアルコールアペリティフブランド。お酒を敢えて飲まないムーブメントに参加するデジタルネイティブ世代が切実に求めるノンアルコールアペリティフブランドとして大注目されている。
2018年、Masarin氏は炎症性腸疾患と診断されたことで、アルコール飲料の摂取を極力減らす事を決心。然しながら、夕食時の友人との会話や美味しい食事を更に楽しむ為のノンアルコールアペリティフオプションがあったらとの想いから、お酒を飲まない人、2杯目以降、お酒の代替になるものを飲みたい人向けにイタリアのアペリティーボの習慣からインスピレーションを受け、Ghiaの設立に至ったという。Ghiaのドリンクは水、濃縮リースリングホワイトグレープジュース、リンドウルーツエキス、オレンジピールエキス、エルダーフラワーエキス、ゆずジュース、アカシア、濃縮イチジク、ジンジャーエキス、ローズマリーエキスやレモンバームエキス他の原材料で構成。スタイリッシュでシックなボトルデザインも人気の秘訣だ。そのままオンザロックにしてもよし、スパークリングウォーター、トニック、ローズウォータやアガベ・デーツシロップで割ってバラエティーに富んだノンアルコールカクテルを楽しむことができる。価格$33。

コネチカット発 話題のノンアルコールビールAthletic Brewing Company

https://athleticbrewing.com/
Athletic Brewingは2018年、コネチカット州ストラトフォードを拠点に設立された革命的なノンアルコールクラフトビールのパイオニア的存在。健康的で活動的なビール愛好家向けに、品質が高い極上のノンアルコールビールを提供するブリューワリーだ。
創立者のJohn walker氏は、健康の為にお酒を辞めた事で、自身の健康が改善し気分が非常によくなったことを実感したという。また、周りの友人達も次々と断酒に成功し、生活が改善していった様子を目のあたりにし、より多くの人々の生活を改善できたらと考え、低カロリーでありながらも本格的なクラフトビールの味を楽しめるAthletic Brewing Companyを考案。美味しいノンアルコールビールを開発するために、数年をかけて何百ものレシピの試行錯誤の末に、従来の醸造方法に改良を加える事で、完全発酵で0.5%以下のアルコール度数に調整されたノンアルコールビールを実現に成功し、米国初のノンアルコールビール醸造Athletic Brewing Companyが誕生した。
Athletic Brewing Companyでは、全て自然な原材料(水、ホップ、大麦、酵母)を使用した革新的なレシピを基に、最新式の醸造所でスモールバッチ、手作業で醸造を行っている。Athletic Brewing Companyのノンアルコールクラフトビールは、従来のアルコールのビールと変わらないくらいコクがあって美味しいと評判だ。現在は、RUN WILD IPA, UPSIDE DAWN GOLDEN ALE, CERVEZA ATLETICA, AT EASE IPAを展開。価格は$12.99(12 Fl oz)。

ノンアルコールのスピリッツブランドSeedlip

https://seedlipdrinks.com/uk/
Seedlipは2005年、ロンドンを拠点にBen Branson氏が設立したノンアルコールのスピリッツブランド。現在は世界7,500のレストラン、バーや小売店で取り扱いをされている。Seedlipのノンアルコールスピリッツは、ハーブ、果物の皮や樹皮を原材料に、300年以上前の薬草の蒸留法方が記載された物理学者John French氏の著書「The Art of Distillation」(1651年出版)を参考に、個々の素材を混ぜる前に銅製のポットの中で蒸留して作られている事が特徴だ。
Seedlip開発の経緯には、お酒を飲まないBranson氏がレストランに出向いた際に、そこでオーダーしたノンアルコール飲料がピンク色をした砂糖のように甘ったるいもので、味は疎か出てくる料理や店の雰囲気にさえも合っていなかったことがきっかけとなり、より洗練された大人の為の世界初のノンアルコール蒸留酒Seedlipを誕生させた。
現在Seedlipは、Garden 108(エンドウ豆とガーデンハーブのブレンド)、Grove 42(柑橘類とスパイスのブレンド)、Spice94(スパイス、ベリーやカルダモンに果物の皮と樹皮のブレンド)の3種類を展開。価格は各$32。

■缶入りカクテルの急増

ノンアルコール飲料増加の一方で、缶入りカクテルも上昇傾向にある。食のオスカーとも呼ばれるJames Beard 財団賞の5度のセミファイナリストで、NY拠点のセレブシェフDavid Chang氏が手掛けるMomofuku レストランの元ワイン・飲料ディレクターJordan Salcito氏が手掛ける微炭酸の缶入りシシリアンオーガニックワインRAMONA(https://www.drinkramona.com/)が注目を集めている。RAMONAは今までにない、オーガニックのフルーツを使用した簡単に飲める缶入りのワインスピリッツでカロリーは90カロリー。砂糖、防腐剤、化学物質の使用は一切なし。Organic Ruby Grapefruit、Organic Blood Orange 、Organic Meyer Lemon、Organic Dry GrapefruitとOrganic Sparkling Roseの5種類を展開。その他にも、オレゴン州ポートランドを拠点に、カクテル愛好家として知られ、家族や友人達の為にカクテルを作っていたCy Cain氏とCasey Richwine氏が数年かけて技術とレシピに磨きをかけ、2018年に創業したボトル入りのカクテルブランドStraightaway’s (https://www.straightawaycocktails.com/spritzers)も、缶入りの白ワインをソーダ水で割った4種類のスプリッツアーを展開。
先行き不安な時代に於いて、心身の健康が多くの人々のプライオリティー。今後もアルコール飲料の代替となる様々なノンアルコール飲料が登場すると予想する。



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