コロナ禍で不動産物件検索サイトZillowの閲覧が新たなトレンドに!

新型コロナウィルス感染症のパンデミックにより、自宅で大半を過ごすようになった今、多くの人々にとって住まいが最優先事項となり、その影響で都市部からの住民の流出が加速している。特にこの春、コロナのパンデミックの激震地となったニューヨーク市内では、多くの市民が市内から近郊及び他州へ移動した。ABC7ニュースチャンネル番組内のコーナー7On Your Side Investigatesが、アメリカ合衆国郵便公社(https://www.usps.com/)に対し調査依頼を行ったところ、ニューヨーク市からの転出者数は、3月だけでも昨年比256%増、3月以降からおおよそ246,000人が転居届を出したことが分かった。この数字は、2019年の同時期と比べほぼ2倍にあたる。背景には、健康、公衆衛生上及び安全面の危惧、リモートワークの導入で働き方やライフスタイルが変わったこと、居住スペースが狭い上に、高コストで密閉、密集、密接が避けられないニューヨークに留まるよりも、より広く安全なスペースで暮らしたい、などといった人々のマインドセットに於ける大きな変化が挙げられる。
また、コロナ以前は家探しを考えていなかった人でさえ、日々物件検索を行っているようだ。米国の大手不動産情報サイトZillowによると、3月以来、サイトの使用率は50%以上の増加を見せているという。この数字は、実際に物件の売買や賃貸取引を行っている人から、ネットサーフィン感覚で日々閲覧している人まで様々。今回は、コロナ禍で不動産サイトZillowが人々の現実逃避のツールとして使われSNS化しつつある実態や、ニューヨーカーの流出状況や移動先の不動産状況も併せてレポートさせて頂きます。

■ニューヨーカーの多くが3月以降、ニューヨーク近郊及び周辺州へと移住

3月以降、ニューヨーカーの多くが、近郊のロングアイランドやニューヨーク州北部一帯のアップステートニューヨーク、ニュージャージー州、フロリダ州、ペンシルバニア州、コネチカット州、マサチューセッツ州、ワシントン州、メイン州、ロードアイランド州他、周辺州へ移住。アメリカ合衆国郵便公社の調べによると、郵便転送サービスの届出が一番多かったのが、ニューヨーク州の隣州、ニュージャージー州ニューアークやジャージーシティ、次にフロリダ州マイアミ、フォートローダーデール、パームビーチ、続いてフィラデルフィア、コネチカット州ブリッジポート、スタンフォード、ノーウォーク、そしてワシントン州アーリントン、カリフォルニア州ロサンゼルス、ロングビーチ、アナハイム、ボストン州ケンブリッジ、ニュートン、ニューヨーク州キングストンと続く。

■不動産検索サイトZillowの利用者がコロナ禍で急増、現実逃避のツールに

https://www.zillow.com/
Zillowは2006年、ワシントン州シアトルを拠点に元マイクロソフトのエグゼクティブであったRich Barton氏とLloyd Frink氏によって設立された不動産検索サイト。PinterestやInstagramが美しいインテリアを絶え間なくストリームするのに対し、Zillowは個々の物件のイメージ、データ、ビデオツアーや詳細情報をサイト上で提供。Zillowを使用して実際に不動産の売買や賃貸契約を行う人も多いが、一方で毎日Zillowにアクセスし、趣味的に物件を検索することで現実逃避を図ったり、お気に入りの物件をSNSやグループチャットでシェアしたりすることにより、コミュニティ化しているのが特筆すべき現象。更に、生活の見直しや将来の生活のプランを描く上でのツールとして活用している人がパンデミック禍で増加している。自宅に居る時間が長くなった今、Zillowはもはや人々の生活の一部になり、日課や趣味の域にまで達していると言えるだろう。

■ティーンエイジャーの間でも人気のZillowサーフィン

興味深い事にZillowの閲覧はティーンエイジャーの間でも人気だ。夏頃に、TikTokのミームで話題となったのが、友人達や好きな人の家の洗面所やお風呂場がどこにあるか実際に家を訪問する前に知っているというもの。何故ならば彼らはZillowでクラスメイトの自宅の間取りの閲覧を既に行っているからだ。多くの若者は、理想の物件情報を保存したリストを持ち、友人達とそれについて話したりシェアしたりして楽しんでいるそうだ。Zillowのサイトは、未だSNS機能は追加していないが、多くのユーザーから、閲覧者が物件上で繋がって交流できるコメントセクションを設けてほしいとの依頼が相次いでいる。

■ニューヨーク市近郊で住宅市場がブームに

パンデミック禍で多くの企業がリモートワークを導入したことで、ニュージャージー、ウェストチェスター郡、コネチカット、ロングアイランド、ハドソンバレーを含むニューヨーク市近郊の一戸建てに人々が殺到した。例えば、ニュージャージー州イーストオレンジにある3ベッドルームの物件には、97件の内見希望、24件の物件購入のオファーが集まり、最終的に当初の販売希望価格$285, 000の21%増で契約が締結された。また、ニューヨーク州ナッソー郡バレーストリームの$499, 000の物件は、Facebook Liveビデオで物件を紹介。実際の内見を行わなかったにも関わらず6人が物件購入のオファーをした。また、住宅ローンの査定やコンサルサービスを提供するMiller Samuel Real Estate Appraisers & Consultants(https://www.millersamuel.com/)によると、7月に於けるニューヨーク市周辺の郊外の住宅販売は前年比44%増、ウェストチェスターに関しては前年比112%増、 コネチカット州フェアフィールドは73%増を記録した。また、多くのニューヨーカーが目を向けた先がニューヨーク市内から車で2時間程北上した先に広がるハドソンバレー地域だ。ニューヨーク州ワーツボロを拠点にする住宅建設業者Catskill Farm IncのChuck Petersheim氏曰く、同社は、通常年に16-18件の住宅を販売するが、直近8週間の販売数は既に6件に達し、週に30件以上の問い合わせを受けているという。殆どの買い手は、今まで一度もハドソンバレーを訪れたことがなく、このような切迫した状態は初めてだと話す。コロナ以前に、ハドソンバレーにセカンドホームを探していた人々の多くが、今ハドソンバレーの家に実住し、そこを拠点に仕事や作業を行い、ニューヨーク市内には遊びにいくという以前とは逆の現象がみられるようになった。

■ニューヨーク市郊外では、新築アパートメントも人気

コロナのパンデミックが始まった3月当時、ニューヨーク市郊外では一戸建ての売上が急増した。両親はリモートワーク、子供たちはオンライン授業というライフスタイルにシフトしたことで、安全でスペースが広く緑の多い、レンタル物件や、セカンドハウスを求めて多くの家族がニューヨーク市内を離れた。一方で、手頃な価格帯とアクティブなライフスタイルが優先事項の家族の間では、点在している一戸建てより、より密集し徒歩圏内にある郊外のコミュニティに建てられた新築アパートメントやコンドミニアムが人気だ。特に、ニュージャージー州の郊外、ニューヨーク州南東部の島ロングアイランド、ニューヨーク州北郊外にあるウェストチェスター郡やハドソンバレーの南端近くに位置するロックランド郡もアクティブなライフスタイルを送るニューヨーカーからの関心が高いエリアだ。

■コロナ禍で不動産バブルに沸くコネチカット州グリニッジ

ヘッジファンドマネージャーやファイナンシャル系エグゼクティブが大邸宅を構えるコネチカット州グリニッジも今、不動産バブル状態となっている。パンデミックが直撃した直後、ニューヨーク市内に住む富裕層が感染リスクを避け、広い住居スペースと安全求めてグリニッジの物件に殺到した事で同地区の不動産の売上げが激増した。米国最大手の不動産会社Douglas Elliman(https://www.elliman.com/)によると、同地区の多くは高額物件が占め、住宅価格の中央値は、2020年第3四半期時点で210万ドル(約2.2億円)。前年比18%増だった。また11月、販売価格200万ドル(約2.1億円)から400万ドル(約4.2億円)の物件の契約締結率は、前年比370%増、500万ドル(約5.2億)から1000万ドル(約10億円)の物件の契約締結率は270%上昇したという。グリニッジ地区のBerkshire Hathaway Home ServiceのエージェントMark Pruner氏は、同氏が扱う725万ドル(7.5億円)の物件に興味を示す買い手は、当初セレブまたは外国人バイヤーだろうと予想していたところ、その物件を見に来る人々の多くが、ニューヨーク市内に居住の就学児童を抱える家族だった事に驚きを隠せなかったと話す。
コロナ禍で不動産の購買や賃貸を契約する人以外からも脚光を浴びたZillowであるが、今後、更なる若年層ユーザーの使用増加により、ZillowのSNS化が実現する日も近いかもしれない。

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