オリンピックや耐震絡みの再開発ラッシュで、真新しい巨大な建物が林立する一方で、古い建物の骨格だけを残すリノベーションも持て囃されている。世界中共通して、ミレニアルズたちは、リノベーションや、過去の文化を紐解くのが好きらしい。新しい建物や新しい洋服よりも、古い建物や古着などを好む傾向がある。“古かっこいい”ものが好きなのである。
今の商品や建物は、効率を考えて、パーツや仕様や省略されたりすることが多い。また、コンピュータを駆使して作られたデザインや、データ活用で売れ筋を追求した企画も多く、どことなく似た感じに仕上がってしまう。
それに比べ、まだコンピュータが普及していなかった時代の産物は、手の温もりや、職人の技、クリエーション、ブランドの世界観というものが生きていた。今ほどの精度や性能は低くても、個性や味わいは十分にあった。リノベーションやアップサイクルは、その商品や施設がピカピカだった「過去」と、リノベーションされた「今」と、それが活用されるであろう「未来」の3つを楽しめる。建築などのリノベーションでは、単純に古い建物に現代的な真新しい内装を施す場合もあるが、一方で古い建物の「古さ」を味として残しながらリノベーションするケースや、古さをさらに強調してレトロさを出しているものもある。1970年代に建てられたビルなのに、リノベーションでミッドセンチュリースタイル(1950年代風)の内装や家具が仕立てられたりしている。これらの要素が、画一的なものや、有りがちなものを嫌うミレニアルたちに刺さったのだろう。画一的で無く、個性的であるからこそ「映える」のである。
ボルボ・カー・ジャパンは、中古車とは別に「KLASSISK GARAGE(クラシックガレージ)」というプロジェクトを行っている。昔のボルボをパーツ交換やコンディション調整で蘇らせている。ヤナセも「クラシックカーセンター」をオープンさせ、世界の名車を扱ってきたヤナセのナレッジ・匠の技で古いクルマに再び命を吹き込んでいる。様々な分野で、古かっこいいものをビジネス化させようという動きが盛んだ。
SDGsだから、リユースやリサイクルなどに力を入れようなどと気負う必要はない。古かっこいいものが流行れば、捨てるものは減っていくのだから。