PBと宝探し消費とオフプライスストア

大手小売業はプライベートブランド(PB)を強化している。モノが売れない時代に利益率を確保しようとすれば、自らリスクを張って商品を開発することが必要不可欠となる。逆にNBメーカーは棚を確保しようとすれば、PB商品の開発・製造を受託しなければならない状況になっている。さらに、2019年10月に消費増税が予定されている。お買い得を謳うPBにはさらに注目が集まるだろう。

多くのPBは市場で売れているナショナルブランド(NB)に近い商品で、価格を7掛けくらいに設定したものが多い。NBはPBを魅力的に魅せるための商品比較ツールのような扱いをされている。また,NBメーカーはPBに奪われた棚を取り戻すために、PBの製造を受託するケースも増えている。これらによって、売れている商品と、売れている商品に似た商品が棚に並ぶことになる。無難な商品を求める消費者は大満足かもしれないが、個性の強い商品や宝探しのような楽しさを売場に求める消費者は買い物のモチベーションが下がる一方である。かつて、宝探しできる売場の代表だった、しまむらやドンキホーテでもPBの比率が高まりつつある。

このような状況の中、注目されているのが、NBの過剰在庫をメーカーや問屋、小売から仕入れて売るオフプライスストアである。ゲオグループが2019年から展開を開始した「Luck・Rack Clearance Market」は、デザイナーズブランドの商品もあれば、GMSなどを中心に展開するブランドもあれば、SPAの商品も混ざっている。売場展開もブランド別ではなくアイテム別であるため、まさに玉石混交で、宝探しが楽しめる業態になっている。自社ブランドの商品を処分するアウトレットストアが、アウトレット専用品の投入で無難な商品の比率が高くなるのとは対照的だ。

Eコマースの影響で、百貨店やファッション専門店が苦境に喘ぐアメリカにおいても、オフプライスストアは好調を保っている。感動するような値段で、思いがけない商品との出会いが期待できる、しかも、過剰在庫処分というSDGsにもつながるオフプライスストアは、リアルな小売業の大きな可能性といえる。

著者情報

第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。

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