大規模停電で見たリアルの力

台風15号による大きな被害が千葉県を中心に起きた。これまでに例を見ない大規模停電や断水により人々の生活に影響を及ぼした。私が住む家の周辺も、月曜日未明から水曜日の夜まで停電という状況になった。あちらこちらで信号機や街灯もつかない状況になり、市内全域が暗闇に包まれた。コンビニエンスストアや食品スーパーも停電等で営業が難しい状況となった。営業がかろうじてできた店舗も、あっという間に食料品が売り切れとなり、発注システムが動かない、物流が寸断されている、工場が稼働できないなどの理由が重なり、商品がなかなか補充されない状況が数日続いた。それなら、ECで注文すればいいじゃないかと思われるかもしれないが、停電で宅配便の営業所の稼働が難しい、冷蔵・冷凍設備も動かないため、食品の一部は扱えない、信号機の影響で渋滞も起きているということで、ECも機能不全に陥った。幸いにも私は都内に通勤できたため、帰りに都内でパンや弁当を毎日買って帰ることで食べ物の確保はできた。市内に住む人もアクアラインで川崎や横浜に「買い出し」に出掛けた人も多かったようだ。

そんな中、平常時では体験できないリアルの力も見ることができた。電気の復旧工事のため、全国の電力会社が応援に駆け付けた。そのベースキャンプ的になったのがイオンモール木更津だ。東京電力との間に災害時支援の協定が結ばれていたため、数百台にも及ぶ高所作業車や電源車、そして作業員の方々の拠点として平面駐車場が活用された。イオンモールは、食材を求めて買い物に来る人やエアコンによる涼を求める地元の人と、災害復旧に努力する人が行き交う場となった。遠くの電力会社のロゴが入ったユニフォームを着た作業員の方をモール内で見かけると、心の中で思わずエールを送りたくなるし、それを支えているモールにも拍手を送りたくなる。これらの心の交流はECではなかなか生まれない。もちろん、宅配便の人も停電の中で頑張っていたとは思うが、ECは「便利」が軸にあるため、災害で「不便」になった途端、リアルが果たす領域との間にまだまだ差があると感じた。

著者情報

第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。

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