新型コロナウイルスの感染防止対策のために、テレワークを実施したり、時短勤務やシフト勤務などの対策を講じたりした企業が多い。
その影響からか、朝夕のラッシュは緩和され、アフター5のオフィス街周辺や駅周辺の飲食店は売上を大きく落とす結果となっている。
ファッションビルや百貨店の営業時間短縮や、人混みを避ける傾向から、仕事終わりに買い物や気分転換をする人も減った。これらの業態には大きなマイナスの影響が出ている。
これらの現象はある意味、今後の時代における変化の大規模な予行演習になったとも考えられる。いわゆる働き方改革でテレワークや在宅勤務はますます増えることが予測される。「情報通信白書」によると、現状、企業のテレワーク導入率は19.1%で、従業員が2000人を超える大企業では46.6%である。今回のコロナ対策でテレワークを急遽導入した企業や、テレワークの対象を全社に拡大した企業もあった。
全員がテレワークになったとしても、企業活動はなんとか回るという実証実験になった。
時短勤務やシフト勤務も同様だ。
現在はコロナ対策での急場しのぎだったかもしれないが、多様な価値観やライフスタイルに合わせた働き方の実施の実証になったはずだ。
困るのは飲食店や商業施設である。人口減少や働き方改革で、駅やオフィス街のトラフィックが減るという実験はできた。
結果、人が減った場合にはそのまま売上減少につながるということも検証できてしまったのである。
現在のビジネスは、トラフィックが多いことを前提としており、今後は少ないトラフィックでも成立する方法を考える必要がある。トラフィックが減ったことで、オーバーストアだということも露呈した。今回はイベントや集客のための施策を自粛せざるを得なかったので、そこには活路が見いだせるかもしれない。飲食店の中には、様々な工夫をして、苦境をなんとかしようと試みたところもある。デリバリーやフードトラックの導入、コロナを逆手にとった567円の飲み放題プラン…。アパレルではeコマースに強みを持つ企業は減少が最小限にとどまっているとも聞く。このような対処がすぐにできた店は、おそらく、人口減少も働き方改革も乗り越えてくれるだろう。
コロナの苦境は、未来に向けた大きな実験として、様々な創意工夫を試すいい機会だと、開き直りたい。
著者情報
第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。
この著者の記事