「歩く」という多くの人が参加できる行為が、ビジネスの種になりつつある。10月には、「ポケモンGO」を開発したナイアンテックが、再び任天堂とタッグを組み、新アプリ「ピクミン ブルーム」(※)のサービス提供を開始した。カラフルな「ピクミン」と街を歩くことで様々なアイテムをゲットできたり、ユーザーが歩いた場所に花を咲かせたりすることができる。毎日、歩いた距離がアプリに記録される。歩くことがエンタテイメントになるアプリだ。
また、同じように「歩く」をコンセプトにしたのが、12月から提供される「ANA Pocket」アプリだ。日常生活で歩くことや移動チャレンジに参加することでポイントが貯まり、特典に交換できる。飛行機に乗らなくても歩くだけでマイルが貯まる。このプログラムに参加する企業は、徒歩等も含めた移動データや位置情報の取得ができ、それに合わせた広告配信も可能になるという。利用者は歩くことで得をし、企業は消費者の移動をビジネス化できる。海外では、自動車での移動を主体とした街から、歩行と自転車を移動の主体にした街の活性化が行われている。
人々の健康は保たれ、環境負荷も抑えることができ、立ち寄ること、休むこと、などを通じて、ショップや飲食店も活性化する。車や電車の移動よりも、歩く方が「映える」ことも見つけやすい。日本でも、京都や鎌倉、金沢など、歩くことが楽しい街は、観光地としての人気も高い。国土交通省も「まちなかウォーカブル推進プログラム」と称して、「居心地が良く歩きたくなるまちなか」を全国各地に創出しようとしている。大阪では11月に10日間限定で、難波駅前を歩行者専用にする社会実験を行った。「人中心の空間に再編し、世界的繁華街ミナミの新たなシンボル空間を生み出す」ことが目的だという。長期的には御堂筋を歩行者専用にする構想を持っている。歩いて楽しい街路、両側にある店、設置された広場、そこで行われるイベント・・・。つまりは、街全体をショッピングモール化することに近い。街全体がモールとなった場合に、ファッションビルや百貨店、SCはどのようなポジションになっていくのだろうか。
(※)ピグミン ブルーム:新作位置情報アプリ。起用したピグミンは、Nintendoで古くから愛されてきたピクミンシリーズのマスコットキャラクターといえる存在。