徐々に日常生活は落ち着きを取り戻しつつあり、消費の回復も期待される。その矢先に起きているのが、様々な商品の値上げや、部品や原材料の不足による供給の制約である。
世界的に消費が回復基調にあることから、原材料の需給バランスが崩れ、原油が高騰したことで製品や物流のコストが上昇している。さらには、コロナ禍で部品の生産が滞り、生産できても、物流ネットワークの混乱やコンテナ不足で届かないという状況も起きている。IoTやAIでもこの状況に対応しきれなかったということなのだろうか。
自動車の購入契約をしたものの、納車の目処がたたない。せっかく、新車でレジャーに出かけようと思ったが、先延ばしにせざるを得ない。ガソリンも今はすごく高いし、まあ、我慢するか。じゃあ、家でゆっくりと家族で料理を楽しもう。牛肉は値上がりしているから、鶏肉でいいか。えっ、鶏肉も値上がり?じゃあ、肉は少なめで、野菜を多めにして・・・。あれ、野菜も値上がりしている。食料油も調味料も高くなっている。パンもコーヒーもパスタも冷凍食品も値上げ。この商品は値上げしてないけど、量が減っている。物価の優等生と言われた牛丼でさえも、各社値上げ。ええい、もう、ヤケ酒でも呑むしかない。えっ、ウイスキーも値上げを予定しているの?
製造を行うメーカーや生産者が悪い訳ではない。これ以上、コストを吸収ができないから、やむを得ず値上げするのだが、悪者にされてしまう。
こんな状況は、消費マインドの回復に水を差すような形になりそうだ。高いものを買おうとしても、品不足。普段の生活は値上げラッシュ。さらには、新たな変異株であるオミクロンの市中感染拡大も気になる。やはり、気が緩んではいけないのかなということも含めて、生活防衛意識も高まるだろう。子育て世帯への10万円給付も、ちょっとタイミングが違ったよな、なんてことになりかねない。ニューノーマルの主流は、やっぱり「節約」だったと言うことにならないことを祈ろう。
著者情報
第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。
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