ネットを介した新しいサービスやSDGsに配慮したサービスなどが、様々な分野で開発されているが、時々「待てよ?」と首をひねることがある。
例えば、衣類のクリーニング。「忙しい人たちに対応して、ネットで予約をすれば、自宅に洗濯物を取りにお伺いします。」的なものが増えている。「すっごく便利になったよね。」って思う人がいるかもしれないが、よく考えてみると、昔はクリーニング屋といえば、店舗に洗濯物を持っていくよりも、家に取りに来てくれる方が標準的なスタイルだった。酒屋も米屋もクリーニング屋も、「御用聞き」というスタイルで各家庭を回り、注文を取り付けていた。
フードロス削減という観点からも、色々と試すことができるという観点からも、「量り売り」というモデルが注目されている。これも、何ら新しいスタイルではなく、昔は多くの食材や調味料が、必要な分だけ量り売りされていた。商店街には味噌の専門店などがあり、いろんな味噌を必要な分だけ買えたし、それを各家庭で自分の好みに合わせてブレンドすることだってできた。
プラスチック削減の観点から、容器を持参すれば、割引などが得られるという売り方も増えている。これだって、昔はみんなそうしていたという売り方だ。リヤカーで引き売りする豆腐屋さんでも、店舗を構える豆腐屋でも、昔はボウルを持って買いに行くスタイルが多かった。おでん屋に鍋を持って買いに行くスタイルも普通だった。今風に言えば「容器持参のエコなスタイルのテイクアウトフード」ということになるのだろう。
効率を求めた結果、御用聞きよりもお客様が訪れるスタイル、量り売りよりも、容器持参よりもパック売りになってしまったものが、ネット時代やSDGs時代で「逆行」する現象が起きている。こんな時代だからこそ、「昭和なテック」が今の時代に息を吹き返している。単純なレトロではない、最新トレンド×「昭和なテック」、最新技術×「昭和なテック」はまだまだ生まれていくだろう。
著者情報
第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。
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