中間層の喪失によって、ファストファッションやコモディティ商品以外のマーケットや、ビジネスモデルに変化が生じてきている。これまでの、分厚い中間層を狙ったマス向けの商品をリアルな店舗で売るというビジネスモデルは、成り立たなくなってきているようだ。

それにとって代わる、注目のビジネスモデルは、自分たちが共感できるサイズの、特定の仲間うちで広がっていくようなものが多い。例えば、「D2Cブランド」も、そのコンセプトに共感して人たちが、コミュニティをベースに広がっていくというビジネスモデルだ。クラウドファンディングや応援購入もこれに近い。応援されたい側、応援したい側の、共感の関係で成り立つビジネスモデルである。
これらは、いわゆるアーティストとファンの関係や、オタクを対象にしたビジネスに近い印象を持つ。共感という関係でつながり、共感した者同士も、UGC(User Generated Contents=ユーザーが生成するコンテンツ)で、さらにつながっていく。
これらの共感をベースにしたゆるく快適な関係や、同じ興味対象を持つ人同士だから分かり合える世界。SNSに象徴されるような自分の興味の範囲以外のものは、あたかもこの世の中に存在していないかのような情報空間。いわゆるそこには、様々な批判を受け付けない、社会課題なんか関係ない、のんびり、まったりした世界が拡がる。よしんば、社会課題があったとしても、その社会課題に関心のある人達が共感して集まる、分かり合える空間が存在する。
これらの延長線上にあるのが、メタバースなのかもしれない。そう考えると、FacebookとInstagramを展開する企業がMetaと商号を変更したのも納得できる。
マス市場を創造的に破壊して生まれる新しい世界は、こうした「チルな経済圏」を生もうとしている。




著者情報

第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。

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