繊維月報の連載など、外部への執筆・講演でもおなじみの ifs 名物プランナー太田敏宏による、時代を独自に読み解くコラム「太田の目」。
今回は不確実な時代で台頭する、「非」領域事業についてその影響に切り込みます。
——————
不確実性と言われる時代に、コロナの感染拡大が起き、既存事業の基盤が揺らいだ業界も多く存在する。鉄道業界、航空業界という人の移動にかかわる業界は特にその影響が大きかった。
乗客の減少により、収益は大きく落ち込んだ。現在は、徐々に回復傾向にあるが、今後、コロナとは違う要因で、同様の事態が起きないとも言い切れない。不確実性という言葉が、まさに現実になった3年間だった。
鉄道・航空業界の大手がこぞって打ち出しているのが、非鉄道、非航空という事業分野の拡大である。運賃に頼るビジネスだけでは、経営が不安定になるおそれがあるために、それ以外の領域を進化・成長させていこうとしている。
その大きな柱として、注目されているのが不動産事業だ。遊休地や駅ウエの資産を有効活用し、収益に結びつける。また、自社の資産だけでなく、新たに不動産を取得するなどして、さらに事業の拡大を狙っている。
これだけ見ると、不動産事業がとても有望な市場に見えてくるが、実はそうでもない。コロナ禍でテレワークが普及し、都市部のオフィス需要は減少。企業によっては、郊外や地方への移転した企業も増えた。また、EC化進展によって商業施設の売上も低下している。これまで商業施設の売上を支えてきたファッションや飲食も、大きな不安材料を抱えたままだ。不動産業界も、賃料だけにたよったビジネスモデルだけでは、今後、経営が不安定になるとの懸念も聞かれる。
各業界で本業が揺らぎ、「非」本業の事業を拡大し、他の揺らいでいる分野に進出していく。この連鎖は、どうしても、不確実性の時代をますます不確実にしていく動きに見えてしまう。
著者情報
第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。
この著者の記事