ハナコ世代とは
-“バブルの申し子”といわれた世代
1959~64年生まれで08年現在44~49歳(図1参照)。
右肩上がり経済の下、「今日よりもっと豊かな明日へ」が信じられた世代。特に女性は「女子大生ブーム」で注目され、社会に出れば男女雇用機会均等法が追い風となり、バブル期にはワンレン・ボディコンで街を闊歩していた人たちだ。衣食住遊さまざまな領域で海外文化を享受し、海外旅行を当たり前のレジャーとして取り込んだ世代。常に自他ともに認める時代の主役であろうとし、その全方位的に旺盛な消費意欲は“バブルの申し子”と謳われた。
そんなハナコ世代も現在は多くが中学・高校生を抱える親となり、住宅ローンと教育費に喘ぐ日々。今回の調査対象者のボリュームゾーンを基に1ヶ月の支出例を作成してみたところ(図2参照)、やはり住宅ローンと教育費が突出しており、夫婦ともに個人消費は慎ましい様子がうかがえた。年収が高ければ高いだけ、教育費に回す額も増えることから、決して暮らし向きに余裕があるとはいえない様子が伝わってくる。
図1:人口分布図人口分布図
図2:一ヶ月の支出例一ヶ月の支出例
今回の対象者18名の世帯年収※のボリュームゾーンである1,200~1,500万円未満(かなり裕福と思われるが)の家計を参考にifsが作成
現在の特徴
-2つの価値観の間で揺れる世代
世代特有のランクアップ志向はそのままに、時代の主役意識の強さからバブル後の等身大志向に自分を順応させた結果、相反する2つの価値観に折り合いをつけようと努力している状態。以下、今回の調査から明らかとなった世代特徴を挙げてみる。
1:最後のコンサバ世代
男女の役割意識、親の介護責任、学歴へのこだわりなど、意外と保守的な価値観を堅持。特にこの傾向は旧来型価値観の企業社会に身を置く男性に強い。また、いい意味でのライバル意識が世代特有の共通体験を生んだ最後の世代であることから、隣の芝生が気になる世代でもある。
2:時流価値に乗っかる
時代の空気感や価値観を貪欲に吸収していく「ミーハー」さは特にハナコ女性の持ち味。バブルの風が吹けば「ワンランクアップ!」になびき、低成長時代には「自然体!等身大!」に頷こうとする。新たな大人文化の担い手と期待されながら若さに執着するのも、アンチ大人イデオロギーがあるわけではなく、単に時代が「若さ」を志向していることに反応しているといえそうだ。
3:見栄張りグッズが見当たらない
人より一歩先んじたいという意識が「見栄っ張り」と称されることも多かったハナコ世代だが、見栄はブランド品や外車など分かりやすい優劣や憧れがあってこそ。価値観が多様化し、明確な優劣なき時代の今、自分を奮い立たせ上昇させてくれるエンジンとなる「見栄」を張るきっかけを探している。
4:関心事は自分と家族で近視眼的
元来は好奇心旺盛で全方位にアンテナを張る世代だが、関心事は「自分」と「家族」の「今」に集中。今後、ゆとりが生じたらより広い視点を持つと思われるが、向かう先はあくまで「自分」。家族それぞれ“私”を優先させることが幸せにつながるといった自分勝手主義家族がハナコ家族といえる。
5:狩猟女vs農耕男
女性の活力源は、旬の空気を自分の中に取り入れること。「今」という獲物の情報を仲間と交換しながら狩りを続けるハンターのイメージだ。一方、昔ながらの役割意識から責任感の強い男性は、厳しい現実を前に今を楽しむ余裕がなく、「楽しかった20代」の果実をもう一度収穫したいと夢見ている。
6:平坦からの脱出女vs日常からの逃避男
男女ともにバブルでハレの頂点を極めているが、現在求めるハレは微妙に異なる。女性はおしゃれなレストレンでのランチなど平坦な日常からちょっと外れる刺激感。男性は何も考えずに厳しい現実を忘れさせてくれる、お馴染みの場所や事柄の追体験による満足感を欲している。
7:外見磨きプレッシャー女vsメタボ回避男
目に見えて実感できる老化現象に驚きながらも抵抗するハナコ世代。ここでも女性が「キレイな女であり続ける」といった攻めの姿勢で挑んでいるのに対し、男性は「おじさんにならないように出来る範囲で気をつける」、どちらかというと美より健康重視の守りの姿勢。せいぜい老いの象徴となる頭髪に重きを置く程度だ。
現在の消費キーワード
● 所有欲>使用欲
● “消費”が何よりのエネルギー源
● チャネル選びは「買えないとつまらない」が作用
自分を計るモノサシが“持っているモノ”にあった時代が長く、モノを買うことで見栄や優越感、満足感が充たされる。そのため欲しいモノ・コトが買えない状況は大きなストレスとなり、少しでも買える可能性のあるチャネルに足を運ぶ。 (写真1)
「港北のイケアやたまプラーザのアフタヌーンティーでインテリア雑貨を見て歩くのが好き!」
(45歳女性/専業主婦)
● 三種の神器=“持ち家・教育・外見”
● 衝動的子供消費
● “家族”にはつなぎとめる装置が必要
高いマイホーム欲は保守的な人並み意識の名残。「教育」は、ある意味、子供の学校名がブランド価値を残す最後のカテゴリー。「外見」は自分の努力如何でどうにかなるかもという気持ちが投資を誘う。 また、子供には非常に甘く、子供の欲しいモノに敏感に反応し買い与えることが愛情の大きさを計るモノサシとなっている。子供を介したモノ・コト消費自体、自己表現の手段であり、「家族する」装置としても機能している。 (写真2)
「ビリー・ザ・ブートキャンプは1ヶ月がんばったら効果があったが、腰痛を起こして除隊した」
(47歳男性/会社員)
● 旬・トレンド意識
● ブランド信奉は健在。判断基準は世の中目線
経済的、時間的制約の中で関心領域は限られているが、“旬”“新しさ”が価値判断基準。女性は外見磨き、男性は家電やAV・情報機器関連にその触手を伸ばしている。また、選ぶ際に何らかの“意味づけ”としてブランドを信頼する志向も強い。 (写真3)
「雑誌でおしゃれな加湿器と話題になっていたので買ってみたが、使い勝手が悪くてがっかり」
(45歳女性/パート)
● シビアになる価格意識。
● ネット情報は欠かせない
価格に対しては非常にシビアなハナコ世代。ネット、雑誌、チラシ、店頭、クチコミなどあらゆる情報源を駆使し、「同じものなら安く買う」を実践。とりわけ、ネットは生活に深く浸透しており、様々な情報のスクリーニングに活用している。 (写真4)
「価格コムは、最安値やユーザーの意見を知るのに参考になるから必ずチェックする」
(46歳男性/会社員)
現在の消費キーワード
図3:現在の消費と今後の意向
今後のターニングポイントと
アプローチのポイント
ターニングポイントは末子の就職。女性にとっては夫にも目を向けるきっかけ、男性にとっては自分を取り戻すきっかけとなることが予想される。今後のハナコ世代へのアプローチポイントをご紹介したい。最後のマスマーケットといわれる彼らを取り込む参考にしていただければ幸いである。
● 根底の価値観を否定しない
「いいんじゃない、バブルみたいなノリで楽しんでも」と言う具合に、過去を肯定してあげるモノ・コト・サービスの提供を行う。
● 意識するのは同世代の同性
芸能人や身近な友人の頑張りを伝える仕掛けがハナコ世代の向上心のスパイラルに火を点ける。
● 自己満足と他人評価をワンセットで
頑張っている自分、イケてる自分を認めてくれるモノ・コト・サービスをセットで提供してあげる。
● 「夫婦できる」「家族できる」場の提供
“私”を優先するハナコ世代は、ともすれば家族解体になる可能性大。「夫婦できる」「家族できる」場の提供が有効に働きそうだ。
● 女性の“未知の快”を満たす
経験したことのない、新たなモノ・コトに魅力を感じる女性には、その好奇心を小出しに、コンスタントに満たすきっかけ作りを提供したい。
● 男性の“既知の快”を満たす
リスクを負うことを避け、既に楽しいとわかっているモノ・コトに魅力を感じる男性には、20代の頃から細々と継続しているモノ・コトを太くしてあげるアプローチが有効。