◆多様化するシニアの願望に注目
2012 年の日本の平均寿命は、男性79.94歳、女性86.41歳(厚生労働省2013年7月発表)。2011 年よりも、男性で0.50 歳、女性で0.51歳延びている。しかし、ただ寿命が延びることだけが幸せではない。誰もが“健康寿命=日常的な介護に頼ることなく、心身ともに健康で暮らすことができる期間”を延ばしながら、残りの人生、楽しくいきいきと暮らしていきたいと思っている。さらに言えば、家族に囲まれ、孫の顔を見ているだけでは満足できないシニア層も増えているのだ。健康体であることは日常生活をスムーズに過ごすための基本だが、その上に「◯◯を続けていきたい!」「◯◯を始めたい!」という願望を積み重ねていきたいと考えている。
特に、現在50 代前半のハナコ世代はバブル景気を経験し未だ上昇志向も強く、消費に対してもアグレッシブ。今後も積極的かつ多彩に「○○したい!」という願望を持ち、これまでシニアとして想定されていた消費の領域を大きく押し広げていくと推察される。これからのシニア女性マーケットを大きく変貌させる、要注目の存在と言えるだろう。
◆“この先シニア”=ハナコ世代は老後の人生設計を始めている
「私の人生、夏にサーフィンは欠かせないけど、たぶん60歳までかな…ってことは私にはあと10回しか遊べる夏は来ないのよ!」と焦りの発言をするハナコ世代女性。「残り少ない時間の中で私はまだまだやりたいことがあるのに、主人はいつも家にいて…。何かやりたいことはないのかしらって、思っちゃう。家にいられるとほんと外出しにくいのよね」と嘆く団塊世代女性。いずれも、残りの限られた時間を意識しながら、いかに悔いなく自分のやりたいことを実現させていくかと腐心する発言と言える。
“これまでシニア”=キネマ世代(団塊世代の上世代)の夫たちが定年を迎えた頃、「濡れ落ち葉」なる言葉が世の中で話題となった。定年後、趣味もなくただ家にいて妻が出掛けるたびについて行こうとする夫を指した言葉である。“ 今どきシニア”=団塊世代の夫たちは決してそうはならないだろうと言われてきたが、妻たちの発言を耳にする限り、あまり状況は変わっていないようだ。まだまだ好奇心旺盛なシニア女性たちに、充実した生活を送ってもらうためには、まずは「夫の自立」こそが最重要課題なのかもしれない。
その点、“この先シニア”=ハナコ世代の夫婦では、すでにそれぞれが老後の人生設計を始めている。例えば、夫は久々に行われた同窓会でバンドを復活させ、残りのサラリーマン人生と並行させながら嬉々として楽器の練習に励んでおり、妻は期待できそうにない年金に頼らずに安定した経済力を得るために、資格取得に向けて勉強をスタートさせていたりするのだ。
このハナコ世代は、定年後のカップル行動・カップル消費が注目される人たちではあるが、これまでのリサーチを踏まえると、それはあまり期待できそうにない。しかしながらそれぞれの消費を楽しむという意味で、これからのカテゴリー発掘に一役買う存在になると言えそうだ。
◆“この先シニア” 女性がマーケットを大きく変える
“これまでシニア”“ 今どきシニア”“この先シニア” は、たとえ同じ60 歳を通過し加齢に伴う同じ悩みを抱えたとしても、そもそも持っている基本的価値観の違いから、消費への向き合い方、自分のケアの仕方、自分の見せ方などが変わってくる。家族との関係や社会との接点の持ち方も然りだ。特に注目したいのは、“この先シニア”であるハナコ世代。彼女たちはバブル景気の申し子であり、消費することが喜びと直結している人たち。また、女子大生ブームを経験し、海外の新しい文化をどんどん生活に取り入れ、総合職など女性の職種が開かれたタイミングに社会人になるなど、常に「社会の中の私」を意識してきた。60代、70代になってもそのスタンスは変わらないと思われる。となると、今のシニアマーケットで展開されているモノ・コト・サービスでは満足できるはずはない。“この先シニア”が「限りある時間」と向き合い、これからの人生の逆算をし始めている今こそ、必要とされるモノ・コト・サービスの掘り起こしをするタイミングにあるといえよう。そして、それらは、“これまでシニア”や“今どきシニア”にとっても、大いに参考となるはずだ。
“これまでシニア”“ 今どきシニア”“この先シニア”の持つ共通点と相違点を明らかにすること(上世代から踏襲されるもの、消滅するもの、新たに加わるものなど)が、今後のシニア女性マーケットを活性化させるには必要不可欠なのではないだろうか。
■シニア女性の相違点
ベースとなる価値観の違い。加齢に伴う悩みは同じであっても、消費への向き合い方、
家族との関係性、社会との接点の持ち方など、基本的価値観で変わってくる。
■シニア女性の今後の人生シナリオと消費
自分の楽しい人生を実現するための線引き。いつまでに何をしたいか、そのために今何をすべきかが考えられている。