堅実な今どき20 代女子の消費

“自分らしさ”を可視化できる「ストーリー」が消費を導く 全体に消費傾向が上向いている中でも、堅実な消費性向を持つ1987 ~ 92年生まれの20代のハナコジュニア世代女子は、いまひとつその波に乗っていない感がある。彼女たちの消費を喚起するためのポイントを考察するために、この世代のライフスタイルプロデューサーとして活躍中の村上萌氏にインタビューを行いつつ、ifsの世代知見も合わせて消費喚起のポイントをまとめてみたい。

ハナコジュニア女子の消費は堅実

ハナコジュニア世代の女性(以下、ハナコジュニア女子)は物心ついたときから、好景気を一度も体感することなく育った。そのため、彼女たちの消費は堅実で、本当に自分に必要なものかどうかをきちんと考えてから購入に至るなど、消費プロセスに“納得”感が欠かせない。さらに、同調志向が強く、モノ・コト選びにおいては失敗しない・悪目立ちしないことが重要。ハイリスク/ハイリターンな攻めの姿勢ではなく、極力リスクを回避したい守りの姿勢が特徴だ。リスクヘッジのため、例えば飲食店選びでは「食べログで、評価3・5以上の店なら間違いない」という認識が浸透するなど、評価アプリが強い味方になっている。デジタルネイティブ第一世代とも言われ、デジタルデバイスを生活の中でうまく使いこなす。

ハナコジュニア女子の消費を促すための「ストーリー」作り

この堅実なハナコジュニア女子の消費を喚起する方法はあるのか。消費とはそもそも今の自分のニーズを自ら確認する行為だが、自分らしさを感じるためにはモノやコトと自分の関係をつむぐ「ストーリー」が肝心であろう。では、ハナコジュニア女子のストーリー作りにはどのような要素が必要となるのだろうか。今回、お話を伺った村上氏は、大学を卒業後まもなく起業し、ライフスタイルプロデューサーとして、日常から少し遠い素敵なモノをいかに自分たちの生活に取り込み、馴染ませるか、ということに取り組んでいる。自分の世代感覚をベースに「本当に自分が自信のある分野でだけ商品開発を行おうと思った」という村上氏。常に自分の日常を軸足として手掛ける商品開発やイベント運営で多くの同世代女子の共感を得ている。

ストーリー作りに必要なのは共創感覚

村上氏が仕事でもプライベートでも実践するのは、「ワクワク過ごすために、何気ない日常のワンシーンでも5W1Hを意識し、自分だけの特別なものにする」ということ。その一環でストーリー作りにも注力する。「白いスニーカーを青や黄色に変更できます、という見かけだけのカスタマイズではなく、例えば自分が家で使って初めて完成するといった、自分が使うことによって埋まる余白感を残しておかなければいけない」と話す。

村上氏は現在、奈良県吉野町と若年層の観光客を増やすための取り組みを行っている。先日、吉野町の間伐材を使いカッティングボード作りのワークショップを阪急梅田本店で行った。参加者(20代・30代女性)は、たくさんのカッティングボードの中から自分が気に入ったものを選び、ヤスリをかけ、自分で考えた言葉を焼印する。完成後はそのカッティングボードを持ち帰り、家でごはんを楽しむ様子を画像共有アプリのインスタグラムに投稿する。この一連のプロセスを経て、自分自身と、間伐材を生かしたいという吉野町の人の想いやワークショップという場を共有した人を含んだストーリーが出来上がるのだ。完成形をこちらが提供するのではなく、その人の生活に入り込める余地・余白を提案することが重要だと言う。ただ、ストーリーの最後は「あ、これは私の日常だ」と共感してもらえるように、必ずその人に作ってもらうようにしているそうだ。「それがその人の自信になったり、楽しい思い出になったりする。後日それを大事に使っている様子を写真でアップすると、その人の生活に入り込む形となる」と村上氏は話す。ストーリー作りにはこうした共創感覚が必要だ。

ストーリーの可視化と共有で
“自分らしさ”を実感

村上氏の話によれば、SNSアプリのインスタグラムが自分で描いたストーリーを可視化するツールとして大きな役割を果たしているようだ。そこでは、ハッシュタグが活用されている。ハッシュタグは、もともとツイッターから始まったものだが、ハッシュマークと呼ばれる「#」の後に、投稿する画像に関連付けたい言葉をつけたもののこと。同じハッシュタグを使えば、フォローしているか、していないかに関係なく、同じ関心を持つ知らない人ともつながることができたり、同じテーマの画像を集積することができたりする。例えば、朝ごはんのワンシーン。インスタグラムで村上氏が作ったハッシュタグ「#E朝」には、朝ごはんの時間を楽しむ人のお気に入りの食卓の写真が4500枚以上集まっている。「もともと私は朝ごはんが純粋に好きで趣味だった。朝ごはんを食べる時間帯はみんな大体同じ。その同じ時間帯に朝ごはんを楽しんでいる全く面識のない人同士が、そのお皿いいですね、そのパンはどこのですか、と会話ができるのが面白い」と村上氏は話す。

「#E朝」の他にも、前述のカッティングボードの「#green週末」など、村上氏はたくさんのハッシュタグを使っている。このように共通のハッシュタグを通じて写真を共有・交換することで、自分らしさや、自分がいいなと思っているライフスタイルに共感するコミュニティが見えるようになる。他人の視線を意識することに敏感なハナコジュニア女子にとって、自分らしさを他人から承認してもらうことや、自分とは違う他人がいることで自分らしさを自覚することは重要なポイントと言えるだろう。

このように、共創感覚をストーリー作りの要として、それを可視化する、という自分らしさを写し出す鏡のようなモノ・コト・サービスがハナコジュニア女子の消費を導くのではないだろうか。


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