次世代の動きを常にキャッチし続けることが不可欠

伊藤忠ファッションシステム(以下、ifs)の世代区分において最年少のLINE世代は、現在19歳~ 23歳、5年後には24歳~ 28歳となる。これからの20代マーケット、さらには次の時代を牽引していく世代であるが、その上の世代とは大きく異なる消費価値観・行動を持っている。今回は、ifsの世代知見と昨年3月・9月に実施した定量調査、そしてifsが定期的に行っている大学生とのディスカッションで得たリアルな声を元に、ファッションを中心としたLINE世代の最新の消費価値観・行動についてひも解く。

◇“コトの経験=思い出づくり”が
  消費の一大モチベーション


LINE世代は1992年~ 1996 年生まれ、現在の主なライフステージは大学生~社会人1 年生。本紙2015 年2 月号でも紹介したように、バブル崩壊後の“ 失われた20年” 育ちに起因する最適化志向と、情報化社会育ちに由来する他人の目を強く気にする意識に裏打ちされた、何事も「最大公約数的状態をはみ出さない=~過ぎない」感覚の持ち主だ。消費など全ての行動が「~過ぎない」感覚に基づいており、周囲との調和を重視することから、友達や仲間との思い出づくりのために何らかの消費を行っていることが多い。ファッションにおいても、他者との違いや個性を強調するよりも、コミュニケーションを円滑にするために消費を行う傾向が強いようだ(図1)。

LINE世代の基本特徴


昨年3 月に実施した定量調査で
LINE世代に「興味のある」「時間を使っている」「お金を使っている」モノ・コトを尋ねたところ(図2)、いずれの項目も「ファッション」が1位となった。一般的にファッションへの関心や消費の優先度が下がっているといわれる世代だが、感覚の上ではファッションに対する意識・消費意欲を依然として高く持っていることがうかがえる。

しかし、2位以下では、「外食・食べ歩き」「旅行・レジャー」「フェス・ライブ」などコトへの反応が高く、昨年9月に実施した「お金を使いたくなるタイミング」(図3)を見ても、「旅行の予定があるとき」「旅行先で気持ちが盛り上がったとき」「フェスやライブなどの予定があるとき」「ハロウィンやクリスマスのパーティーなど季節イベントの予定があるとき」などが挙がることから、コトが消費のモチベーションとして大きく働いていることが分かる。特に、フェスやライブは音楽を楽しむだけではなく、物販やフードなども含めて楽しめる一大イベントになっているようだ。また、音楽好きな友達以外に音楽の話はしないという声も大学生から多く聞かれた。「こういう音楽を聴いている人だと一方的にイメージを持たれるのが嫌」なのだという。自己イメージを常にニュートラルに保っておきたいという感覚の一端とも受け取れそうだ。

1位の「ファッション」においても、お出かけやイベントを楽しむためにファッションを意識するケースが増えており、仲の良い友達や恋人同士でおそろいのコーディネートにしたり、コスプレをしたりすることも多いようだ。昨年3 月の調査でも、「友達やパートナーとおそろいのファッションやコーディネートをするのが大好きだ」に対してLINE世代の11.3%が反応しており、絶対値としては小さいものの、全世代の5.7%を大きく上回る結果となった。


図2:LINE世代が「 興味のある」「時間を使っている」「お金を使っている」モノ・コト



図3:LINE世代がお金を使いたくなるタイミング

◇どうせブランドを買うのなら
  それと分かる方がいい


LINE世代とその上の世代では、ブランドに対する意識も異なっている。10 年前の20 歳前後は、ブランドのロゴ入りアイテムなど明らかにどこのブランドか分かるデザインを敬遠する傾向にあった。しかし現在の20 歳前後では、ほんのわずかでもロゴの入ったアイテムの方が売れる傾向にあるという。こうした動きについて大学生に尋ねたところ、「トレンドはファストファッションなどで安く取り入れられるので、どうせ高いお金を払ってブランドのものを買うならば、それと分かる方が良い」という声が聞かれた。1990 年代から2000 年代にかけてのブランドの飽和、衣料品の低価格化を経て、若者世代のブランドに対する感覚は「あえて隠す」から「どうせなら主張する」へと変化したことを示す事例といえよう。

◇Instagramはもう時代遅れ?
  自分に最適化できる情報を得たい


近年、画像をメインにしたSNSである「Instagram(インスタグラム)」が若い世代を中心に人気を集め、ファッション情報を発信・共有するツールとしても注目を集めている。「LINE世代のファッション情報収集源」に関する調査(図4)でも、トップ3は依然としてTV、ファッション誌、店頭が占めるものの、ネット・デジタル系情報源である「ファッション系のまとめサイト」「有名人、おしゃれアイコンのSNS(Instagram、Twitterなど)」「ファッション誌のWebサイト」がトップ10 にランクイン。10 位以下にも「ファッションブランドのSNS」「ショップのSNS」「コーディネートの情報が得られるアプリ」「ファッションブログ」などが挙がり、そのどれもが全体に比べ高い反応を示した(図4・赤字)。LINE世代では、ファッションの情報収集においてもデジタル化が進んでいることを示す結果といえよう。また、これらネットやデジタルを介した情報源の中には、ブランドやショップなどが直接情報を発信しているものが多いことも特徴的だ。大学生からは、「雑誌などの紙媒体は編集されている分、自分に必要のない情報も多く、押し付けがましさを感じる点が多い。一方、『Instagram』は共感できる人が発信する情報を直接フォローでき、嫌になったら気軽にフォローを外すことができる点がよい」という意見もあった。世代の特徴として単にデジタルへの親和性が高いだけでなく、自分に最適化できる情報を受け取りたいという感覚が強いことがうかがえる。

「Instagram」については、既に2 ~ 3 年前から使用している情報感度の高い層からは「今はマス層が盛り上がっている状態で、自分たちはもう飽きてきた」という声も聞かれ、次なるSNSが模索されている様子。また、画像や動画を活用したコミュニケーションの非言語化も進んでいる。LINE世代のさらに下の世代、現在の中高生では「MixChannel(ミックスチャンネル)」に代表される動画をメインとしたSNSが盛り上がっており、今後さらに新たな流れが生まれていくことも予想される。

次代を牽引する、情報発信やコミュニケーションの動きを把握するためには若い世代の生活実態をウォッチしていくことが欠かせない。ifsとしても、LINE世代をはじめとした新世代の動向に注視していきたい。

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