デザインはどこに向かうのか?

三宅一生さん、森英恵さんという、日本のファッションを世界に知らしめた2人のファッションデザイナーが相次いでこの世を去った。お二方が日本のファッションに与えた功績は非常に大きい。この時代は、まさに「イッセイミヤケ」「ハナエモリ」というブランド名が象徴するように、デザイナー個人のクリエイティビティがブランドになっていた時代だ。
この後、いわゆるDCブランドブームを経て、デザイナー個人から、組織でデザインを作り出す時代に移り変わる。デザイナーが全面に出るというよりも、商品企画の担当者の一人として機能する時代へと移り変わっていく。
年間52週にわたり、商品が常に作られ、それが消費されていく今の時代にとっては、一つ一つの商品のデザインに才能と時間をつぎ込んで生み出していくというよりも、デザインそのものが大量生産・大量消費されていくような印象すら持ってしまう。
ここ数年で登場してきたD2Cという呼ばれ方をするブランドによって、再び、個人の才能にスポットが当たるようになってきた。但し、この“才能”は、デザインやクリエイティビティという才能ではなく、起業家やマーケティングとしての才能や、もともと異分野で発揮してきた才能=タレント性への注目である。これらのD2Cブランドにおけるデザインは、主役の座に返り咲いてはいないのだ。
技術の進歩によって、AIがデザインに携わる領域が徐々に広がりつつある。過去の膨大なアーカイブを参照しながら、売れている商品の要素を掛け合わせれば、ひとつの商品の雛形が出来上がる。これに、人間が少しだけアイデアを加えれば、商品のデザインは完成する。
そういったプロセスで出来上がったデザインの商品に、何の抵抗もなく、消費者は商品を購入していくだろう。だが、一方で、本当の意味でデザインされた商品を求める人も少なからずいてほしいと感じるのは、私だけだろうか?





著者情報

第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。

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